PaytmのUPIモード

PaytmのKYCが切れて以来ずっと使えないまま何日か経過している。そのせいで、あらためてPaytmの便利さというかPaytmへの依存度を実感している。なにしろ一服しようと思ってチャイ屋に行ってもたかだか17ルピーのお茶一杯すら買えないのだ。かといってそんな少額のためにわざわざ現金を使うのも煩わしい。

なんとかならないものかと苦悩しつつもほとんど諦めていたのだが、灯台下暗しというか盲点だったというか、普通に回避できる方法を見つけた。

 

インドにはUPI(Unified Payment Interface)という、国を挙げて規格を制定した決済の仕組みとインフラがある。ざっくりとした説明は検索すればいろいろ出てくる(たとえばここなど)が、この仕組みによる恩恵のひとつとして、私企業の決済アプリでも、きちんと国から認可されていれば、そのアプリが直接銀行口座に働きかけて入金・送金できるようになるというものがある。Paytmもそのような認可を受けたアプリの一つで、僕もいちおうPaytmからUPIを利用できる設定だけは済ませていた。何をするかと言うと非常に簡単で、KYCの有効期間中に、自分のデビットカードの情報をアプリに登録しただけである(アプリに登録したといっても、実際のデータはリモートサーバーのほうに保存されているんじゃないかと思うが)。

しかし、登録を済ませただけで、それ以降使ったことは一度もなかった。というもの、僕には、このUPIという仕組みの何がどう便利だったり画期的なのか、まるでピンと来なかったのだ。現地のニュース記事や解説記事を読むと、このUPIは素晴らしく画期的であってGame Changerだというようなことを説明していたりするのだが、それらを読んでも僕にはぜんぜんイメージが掴めなかった。別にデビットカードでできることをスマホアプリからやれるようになるというだけじゃないか、それってそんなに便利で画期的か?普通にデビットカードでやればいいじゃないか、とずっと思っていた。それに、僕がPaytmを利用するシーンというとチャイ屋でお茶を飲んだり職場のカフェテリアで90ルピー足らずの昼食を食べるぐらいだったので、もともとのウォレットの機能だけで充分事足りていた。ウォレットにチャージする手間というのは確かにあるのだが、一度に何千ルピーもチャージしておけば2ヶ月ぐらい持続できる。世の中の評論家やら誰やらがみんな革命的であるかのように大絶賛しているのにそれがぜんぜんピンとこない自分は、ひょっとしてとんでもないアンポンタンなんじゃないかとずっとモヤモヤしていた。

 

そんなわけで「UPI」というものに特に幻想も何も持っていなかったのだが、ウォレットが使えなくなったという実にQOLが低下する事態に直面したので、ついに試してみることにした。

 

肝心の利用方法であるが、UPIを使用するための登録作業(Paytmアプリ上でできる)さえ済ませてしまえば、その後はとても簡単である。

 

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↑ まず普通に「Pay(支払う)」を選ぶ。

 

 

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↑ 次に、支払先のQRコードをスキャンする。ここまではウォレットの場合と同じ。

 

 

 

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で、こういう画面が出てきたら、“Amount”欄に支払うルピー額を入力したあとに普通は“Paytm Wallet”を選択するのだが、ここであえて「Citibank」のほうを選ぶ。つまり、登録した僕のデビットカードから支払うという指示をするのだ。

 

これだけで良い。これで支払いに進むと、普段POS端末でデビットカードを使うのと全く同じように4桁の暗証番号を入力する画面が出てくるので、入力して提出すれば、そのままウォレットの場合と同じように支払いが完了する。違いは、ウォレットではなくて自分の銀行口座から直接お金が引き落とされるということだけだ。まるで自分のスマホがそのままPOS端末となったかのように。

 

で、今日初めて使ってみて思ったのだが、これは確かに便利だ。今回使ってみて実感したのだが、ふところからデビットカードを取り出すというごく簡単な作業でさえ、実は非常に面倒くさい作業である。それが、UPIによる支払いなら全部自分のスマホで完結するのだ。それもPaytm(というかUPIに対応したアプリ)ひとつで。POS端末の場合ネットワークへの接続性が非常に悪いことがあり、通信に失敗して支払いできないということもたびたびあるのだが、それに比べるとだいぶ安定しているように感じる。つまり、日々の決済の手段がますますPaytm(もしくは他に自分が常用している決済アプリ)に一本化されるので、アプリを切り替えたりカードをわざわざ懐から出すという手間がどんどん省ける。アプリ側から見ても、決済手段が自分のウォレット以外のものが増えるので、たとえばPaytmのように自分でE-Commerceのマーケットプレースを運営しているようなビジネスなら、そこでのユーザーの購買を促進できるだろう。

 

これがゲームチェンジャーなのかというと「そこまでかなぁ」という疑問が正直今もまだ残っているのだが、確実に便利であるとは思う。もちろん銀行口座に直結しているがゆえのリスクはあるのだろうが、そこはデビットカードやクレジットカードを盗まれたときと同じ措置を取れば良いだろう。つまり、たとえばスマホを盗まれたとか紛失したことが分かった時点で銀行に連絡してカードをブロックすれば良いのだ。

 

ウォレットの中身はどうせ数百ルピー程度だったし、もうウォレットのKYCのことは諦めてUPI活用に乗り換えようか。