ISKCON寺院

窓を開けたまま寝ていると,早朝の空が白みかけてきたかどうかという時間にお祈りの声が聞こえてくることがある。普通は気づかずに寝続けるのだが,眠りが浅い時にはそれで目が覚めてしまうこともある。といっても低く落ち着いた声なので嫌な気分にはならず,じっと耳を傾けているうちにスーッと二度寝できてしまう。

あれってなんだろう,近くにそんなお寺とかあるんだっけか…と思ってたら,実は住んでいる場所から1kmもしない場所に,ISKCON Templeという有名な寺院が存在するのであった。インドに来て5ヶ月が過ぎようとしているのに,不覚にもぜんぜん気づかなかった。聞くところによると一般人でも普通に拝観料を払って入場できるらしいので,特に下調べはせず,場所だけ確認して行ってみた。

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自宅からゲートの外に出てしばらく歩いたところから撮影。写真だとピンと来ないかもしれないけれど,けっこうな大きさ。距離的には本当に600mかそこらだけど,例によって道が歩きにくいのでけっこう遠く感じた。歩行者も歩道よりも車道にはみ出て歩いていた。いいかげん歩道をちゃんと整備しようよインド…。

 

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そして入り口まで来た。ここから先は写真撮影禁止なので,中の様子は全く撮影できなかった。そういうわけで,以下は思い出しながら書きます。

 

この入り口の前に立って初めて気づいたのだけれど,実はここは10年ぐらいまえに初めてインドに来た時に,当時の取引相手だった地場会社の人に案内してもらって訪れたことがあった。その時に案内してくれたK氏が,いまやうちの会社に移籍して副部長クラスだったりするんだから,運命ってのは面白いもんですな。

この入口からしばらく緩やかな階段を登っていくと,そのうちに入場料を支払う場所が出てきた。300ルピーと書いてあるのでそれは問題ないとして,受付のおじさんの横にある看板が気になった。「ここは神聖な場所だから,服装にも最低限の礼節をお願いします。ツーリストのみなさん,短パンはNGなので,然るべき服装に着替えてください」というようなことが書いてあって,長ズボンや長いスカートを履いた人の絵が描いてある。思いっきり短パンを履いていたので困ってしまった。早くも計画倒れか…と思っていたら,受付のおじさんが手招きしながら「ノープロブレム。レンタルあるよ」と言う。なんだかよく分からないけど大丈夫そうなので,とりあえず300ルピー払って指さされた方に進んでいく。

進んだ先には履物を預ける場所があった。そこらに無造作に置いてあるズタ袋に履物を突っ込んで2ルピー(1足あたり)といっしょに係員に渡すと,番号札をくれる。ここからは裸足。そのままさらに進んでいくと,通路の横にいたおじいさんが「520ルピー」と言いながら隣を指差す。見ると大きな布切れを畳んだものが無造作に積まれていて,係員らしいお兄さんが手招きしている。これがレンタルか。素直にそのお兄さんのところにいくと,薄い生地の布を腰から下に巻いてくれた。そのままおじいさんに520ルピーを払うと「500はデポジットなので,帰り際に布を返してくれれば払い戻す」という。なるほど。

そのまま進んでいくと,足首ぐらいの深さの水溜めがあって,みんなそこをじゃぶじゃぶと歩いていく。足を清めるということなんだろうが,別に水が流れているわけじゃないのでなんだか汚い気がした。水虫だらけのやつが通ったらアウトだな…なんて思いながら我慢して通り抜ける。そのまま,細い通路の途中にご神体が何体か置いてあって,通り過ぎる人も入れば立ち止まって手を合わせる人もおり,さらには地面にひれ伏して長いこと拝んている人さえいた。また,ここで初めて気づいたのだけれど,ここで祀られている神様はクリシュナだった。

そのままさらに進んでいくと,上の方の写真にある寺院がひときわ大きく目の前に出てきた。見れば見るほど大きい。また,そこはこの辺一帯ではかなり高い丘の上にあるので,バンガロール市内がある程度遠くまで見渡せて眺めが良い。こんな大きな建物に今まで気づかなかったのは何とも不覚だった。ただ,自分の住んでいる部屋から見ると,位置的にちょうど他のマンションブロックやオリオンモールなんかに塞がれる形になるので,見えなかったのも仕方がないといえば仕方がない。

そしてついに寺院の中に入ると,20mぐらいありそうな高いドーム状の天井があって,その全体に4つの天井画が描かれている。部屋の面積自体も広いので,天井の絵もかなりの規模になる。ああ,確かにこんなだった,10年前もこんな絵だったな,と記憶が一気に蘇ってきた。ドーム部屋の一番奥には金ピカの祭壇があって,クリシュナとその奥さん(恋人?)らしき人(神?)のカップルの像が何体も置いてある。基本的に部屋の壁沿いにぐるりと歩いてそのままドームの下の階に抜けていくコースになっているのだけれど,途中で部屋の真ん中に入れるようになっている。そこはゴザが敷いてあり,老若男女が思い思いに座って,お喋りしたりジッと祭壇を眺めたりしていた。僕もそこに入ってみる。見渡してみると東洋人は僕以外には誰もいない。かといって別に回りからジロジロ眺められるわけでもないので居心地は悪くない。

ゴザの上に座って上を眺めると,改めて凄い絵だなぁと思った。クリシュナという神様の子供時代や青年時代を描いたもので,例のみんなが連想するインドの絵画っぽい絵柄なんだけれど,色使いはむしろ西洋の油絵に良く似ており,典型的なインド絵画から受けるドギツい印象はほとんど無くて,静かにいつまでも眺めていられそうな気がした。っていうか実際に20分ぐらい眺めていたと思うけれど,ふと我に返って周囲を見回すとだいたいみんな5分ぐらいで立ち去っているみたいなので,恥ずかしくなって自分も退散することにした。

途中,水の入った鉢から小さい柄杓で水を汲んで拝観者の掌に注いでいる人がいた。観察していると,掌に注いでもらった拝観者はそれをちょっと舐めたり自分の頭にふりかけている。自分も2ルピーコインをお布施として渡して掌に注いでもらった。注いでくれた坊さんは「ドリンク,ドリンク!」というので啜ってみると,苦いような独特の味で,お線香のような香りがした。美味いものじゃない。そのまま先に進むと,インドの主要な言語と英語で書いたクリシュナの神話解説の本やベジタリアン料理のレシピの本があった。特に欲しいものでもなかったので何も買わずにスルーしたけれど,後で気づいたところでは,なんと入場料を払って受け取ったチケットと引き換えに,基本的な解説書をタダでもらえたらしい。しまった。

これで大体終わりで,あとは下のフロアに通じる階段を降りつつ,土産物売り場やお菓子・食べ物売り場が続く。この手の土産物には興味ゼロなんだけれど,インセンス(お香)はちょっといい香りがしたので買っちゃおうかと少し迷った。とはいえ,どうせすぐ飽きるだろうなと思って買わなかった。

途中,また待ち行列が発生。なんだろうと思っていたら,何やら葉っぱで作った使い捨ての皿に,豆カレーを注いで渡しているおじいさんがいた。どうやらタダみたいなので,そのまま行列に並んで貰って食べてみた。素朴ながらスパイスが弱めで優しい味だったので,これはこれで美味しい。フォークもスプーンもないので,皿をコップのように傾けて飲み物のように飲むしかない。見ていると周りの人たちもそうやっている。食べ終わったら近くのゴミ箱に皿を捨てて終了。

そのまま道沿いに歩いていくと,履物を預けた場所に出てきた。そこで番号札を渡してサンダルを回収。ついでに腰布を借りたところにも出てきたので,引換券と腰布を返すと受付のおじいさんがちゃんと500ルピーを返してくれた。これですべて終了。家に帰ったらちょっとぐったりした。

帰ってから改めてググると,どうやらこの寺院は比較的新しい(1997年に建設)もので,クリシュナ意識国際協会(ISKCONというのが「International Society of Krishna Consciousness」の頭文字だということもここでようやく知った)なる新興宗教団体とも慈善団体ともつかない組織が運営しているらしい。むー,マジか,なんかちょっと胡散臭いな〜,と思ったけれど,いろいろ読んでみると,オウム真理教みたいなあの手のヤバい宗教団体ではなさそうでもある。実際,寺院に行っても勧誘とかはまったくなかったし,伝統的なヒンドゥー教団体とも別に喧嘩したり目をつけられたりしているわけでもなさそうなのと,Google Reviewもおしなべて好意的なところから見て,少なくとも今日行った場所は観光名所として成立しているっぽい。とはいっても,一度行けば充分だろうな。

 

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戦利品。トレカみたいなものとお菓子。お菓子のパッケージはひたすらクリシュナ推し。中身は白いかりんとうといった味わい。お茶が欲しくなった。