クリケットの話

朝:シェラトン

昼:コーヒー

夜:自炊カレー,キャベツの浅漬け

 

2週間ぶりにシェラトンに行ったら,ウェイターのお姉さんとお兄さんに満面の笑みで「Welcome back!」と言われた。気恥ずかしいけど嬉しい。パンケーキを焼いてくれるサービスがあったので2枚お願いした。メープルシロップをかけてくれて,コクのある甘みがとても美味しい。

 

さて,以前会社の企画で遊んだクリケットについて細かく解説したい。言葉だけだとイメージが湧かないだろうから図解を試みてみる。なお,これは会社の試合向けに(かつクリケット音痴な日本人も考慮して)グッと簡略化されたルールに基づいたものであって,プロの試合では遥かに細かく複雑に規定されたルールになっている。それでも本質的なところは共通しているだろうから,クリケットとは概ねこんなゲームなんだなと理解してください。

 

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守備側の目的は「ボールをバッター背後の3本の棒に当てること」,攻撃側の目的は「ピッチャーのボールが3本の棒に当たらないようにバットで防ぎ,そのボールが守備メンバーに拾われて3本の棒に当てられないうちにベース(緑色の領域)をできるかぎり往復する」というもの。

 

アウトの条件は:

  • ピッチャーの投げたボールが3本の棒に当たってしまう,
  • 振ったバットが棒に当たってしまう,
  • 打ったボールがフライでキャッチされてしまう,
  • 走っている最中にボールを3本の棒に当てられてしまう,

のいずれかになる。

 

バッター(攻撃側)はバットを大振りする必要はぜんぜんなく,とにかくボールをバットに当てて適当な場所に弾き返し,守備側がボールを拾っている間にベース間を走れば良い。片道を走りきれば1点扱い,つまり2人のランナーが同時に走る(往路側と復路側)ので,1回走れば2点入るという勘定になる。この2人のランナーで打順を回す。

ただし,ゴロであれノーバウンドであれ,グラウンドの外にボールが出ればホームラン扱いで自動的に点が入る。ゴロなら4点,ノーバウンドなら6点(だったかな)。そういうわけで,ホームランや爽快感を狙って思いっきり振る人も当然いる。

 

ざっくり言うと以上の通り。以下,野球と比較して感じた差異や思ったことをつらつらと挙げる。

  • ピッチャーはやたらとギクシャクした動きで,5mぐらい助走をつけながら右手を真っ直ぐに伸ばして,3本の棒に目掛けて地面にワンバウンドさせてボールを投げる。投げ方は常にオーバースローで,ちょうどソフトボールの投げ方(アンダースロー)の正反対というイメージ(かつ助走つき)。
  • バッターにはストライク・ボール・ファウルといった概念は無し。3本の棒にボールが当たらないかぎり,何度でも打ち続けられる。ピッチャーがノーコンで棒になかなか当たらないと,いつまでも同じ打席が続く。ただし,棒の背後にいる守備の人がそのボールを受け損ねたら,その隙にスチールしてもOKらしい。
  • 攻撃側の人の体にボールが当たってもそれは問題なし(アウトとは見なされない)。とはいえ,プロの試合では堅いボールを使うので,プロのバッターはみんな野球におけるキャッチャーみたいな重装備で防御している。
  • 野球のような9回裏表までといった考え方はなく,ボールを一定数投げることで試合終了になる。今回の試合では1チームあたり120球だったか150球だったかな。
  • 何アウトになれば攻守交代になるのか良く分からなかった。2アウトか3アウトぐらいだと思うけど,一方で投げられた球数によって交代になってたような気もする(訊いてみようと思ったときに打順が回ってきたのでそのまま確認するのをすっかり忘れてしまった)。
  • 攻撃側は同時に2人がマウンドにあがり,この2人でずっと攻撃を回す。どちらかがアウトになればそのアウトになった人と入れ替わりに待機メンバーが出てくる。一方で,アウトにならない限り同じ2人による往復がずっと続く。その間,ベンチの待機組はまったく出番なし。前回の記事で「暇な遊び」と書いた理由はここにある。

 

こんな感じの,非常にのんびりした悠長な遊びだった。国民的スポーツなのでインド人には本当に申し訳ないし失礼だと思いつつ敢えて書くと,なにしろのんびりしているので,プレイするにしても観戦するにしても退屈だなぁと感じた。守備側の立場で見ると,基本的にはピッチャーだけがひたすら疲れて,他の守備者は基本ずっと暇。自分の所にボールが飛んできたら,とにもかくにもホームランにならないようにキャッチするなりなんなりしてボールを拾い,ホーム側に投げ返すだけ。攻撃側も,アウトにならない限り着実に点数が積み重なるので,野球のようにガツガツ走ろうとはせず,片道を走り終えたらそこで止まるケースがほとんどだった。野球は隙あれば盗塁を狙ったり,できるかぎり二塁・三塁を狙って走ろうと頑張るけど,クリケットはそういう貪欲さは見られない(気がした)。こののんびりした感覚は,まさにイギリス発祥の紳士のスポーツだからだろうか。

 

なお,野球の考えが頭にあるのでついつい打者側を「攻撃」,ピッチャー側を「守備」と表現してしまったけれど,ボーっと試合を観察していると,「3本の棒にボールが当たらないようにバットで防ぐ」ということから打者側が「守備」だなぁと感じた。同様に,ピッチャー側は「棒にボールを当てて相手を負かす」という点から,彼らのほうが攻撃していると見なせるかもしれない。なんとなく,中世の戦争における攻城戦みたいなイメージが湧いた。棒が城で,ピッチャー側は投石機で攻めてる,みたいなの。同様に,ピッチャーやバッターという用語もクリケットの呼び方ではない。クリケットでは,野球のピッチャーは「ボウラー」,バッターは「バッツマン」と呼ぶ。 

 

日本人はこんな調子でずっと暇を持て余していたけれど,インド人たちはベンチ側にいるメンバーが拡声器でジョーク交じりにばんばん実況したり囃し立てたりして大いに盛り上がっていた。Yさんが「…インド人に向いてるスポーツだと思いますよ。いや,ほんとに…」とボソっと呟いた。

 

しかし,こういう盛り上がりも最初の2試合だけで,3試合目にもなるとインド人たちもみんなテンションが下がって徐々に静かになっていた。まあ,やっぱり疲れるし飽きるよね。ビリが確定した段階でさっさと帰っちゃった人もいたし。プロの世界だと1試合で数日掛かることもあるらしいし,つくづくのんびりしたスポーツだ。

 

野球の感覚を引きずるとどうしても暇に思ってしまうけれど,一方でルールが肌で分かったのは本当に良かった。よくスポーツバーで放送しているクリケットの試合も,今後はもう少し身近な感覚で鑑賞できる気がする。

 

さて,ここまで書いておいてなんですが,試しに検索してみたら,非常に分かりやすく解説しているサイトがあったので,こちらも併せてお読みください。真ん中あたりからクリケットの話が書かれています。