神罰

毎週日曜日だか、あるいは月曜日の早朝に、清掃人がオフィスの全席の机をザッと拭いているらしい。らしいというのは実際にその場面を見たことがないからだが、とにかくそういうことになっている。そして、その時の拭き方が極めて雑で、机の上にある程度整理して置いている書類や卓上電話や小物入れのカゴなんかが容赦なく位置を乱される。清掃人としてはとにかく拭くことがミッションであって、机上の物の配置を元に戻すとか、そういった配慮はまったくないらしいのだ。そして、日本からの出張者が持ってきてくれたお土産のお菓子なんかも、日持ちするやつをたまたま机の上に置いておいたら、週明けに出社してきたときには無くなっているなんてこともよくある。白い恋人3枚が食われた時には切なすぎてどんよりした。

 

さて、会社の僕の席には2年前の年末に一時帰国したときに京都で買ってきた猫の置物がある。

f:id:amaken1976:20180917230026j:image

 

デザインが可愛いらしく、焼き物のちょっとざらついた質感の手触りが良かったことと、起き上がりこぼしになっているのを気に入って買ってきたのだ。嫌な交渉ごとのメールの文章を書いている時なんかに、ダーッと激しい文章を書いたあと、これをちょっと手の上で転がしたり弄ったりして一息置いてから、もっと冷静な文章に書き直したりしている。

 

そういうわけで今日もそれを手に取ったら、こんな事になっていた。

f:id:amaken1976:20180917230047j:image

 

大ショックで、座っていた足が一瞬震えた。放置していて自然にこんなふうに割れるわけがないので、清掃人が手荒く扱って台から落ちたとか、あるいは「お、なんだこれ」と興味を持って手に持ってあれこれ弄っているうちに割ってしまったのだろう。今日一番のどんよりであった。とりあえずアロンアルファみたいなボンドでくっつけておいた。割った掃除人にはマハーカーラの神罰が下れば良いのにと思った。

 

f:id:amaken1976:20180917230056j:image

 

そうしたら、あろうことか僕に神罰が下った。帰宅時に尻ポケットからスマホを出したら、手からすっぽ抜けて大理石の床にベタンと落ちてしまったのだ。まるで毛細血管のように画面中に走ったヒビを見てヒンドゥーの神々の恐ろしさを思い知った。