ボッバ

以前の欧州旅行の帰りにいくつか所持物を紛失してしまった件は、当日の日記では「無理やり立ち直ることにした」と気楽に書いて済ませたものの、実は内心では今日に至るまでずっと引きずり続けていた。それなりにいろいろ大事なものが入っていたので、ずっと鬱々とした気分が晴れず、トイレとかシャワーのたびにふと頭にそのことが湧いてきて、自分の太ももをバンバン叩いたりタオルに噛み付いてウキーーー!っと奇声をあげたりするような状態だった。

 

必死に記憶を掘り起こし、それがドイツ発マスカット行きのフライトの中か、マスカット国際空港の中でトランジット中のどちらかのタイミングで紛失したのだと見当を付け、空港に相談したら、数日のやり取りの末になんと空港側から見つかったという報告をもらえた!!丁寧にも現物の画像まで付いてだ。これで第一関門は突破でき、さあ次はどうやって受け取ろうかという段階になったら、空港でもそのへんはちゃんと心得ていて、「FedExなりDHLなりの郵便会社に相談して、空港の所定の住所まで引き取りに来てもらいなさい」という指示をもらい、その住所を教えてくれた。そういうわけで、会社でもよく利用しているDHLに相談してみることにした。もちろん業務としてではなく個人としてなので別に何か特典とかがあるわけではないのだが。

 

そのあともDHLや空港との間でかなり面倒なやり取りが続いて、いろんな書類を悪戦苦闘しながら埋めて提出したのだが、そういった闘いの末にようやく現物がバンガロールに到着し、空港付近の貨物を扱う区域に保管されているという状況になった。そして、「税関でのクリアランスと税金を払う必要があるから、直接こちらに来なさい」と言われ、この土曜日に朝8:30から空港まで向かった。

 

という長い前置きを踏まえて、ようやく本題に入る。

 

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バンガロールに住んでいる人なら、空港の手前付近で「MENZIES AVIATION BOBBA AIR CARGO TERMINAL」と表示された大きな建物をみたことがあるだろう。MENZIESはともかく、BOBBAというのが妙に気になる。思わず「ボッバ」と口にしてみたくなる不思議な響きである。あの建物一体何だろうな、とずっと思っていたのだが、ココこそ、まさにバンガロール宛の国際便貨物が集中している場所なのだ。ここに至るまでの段取りは次の通りだった。

 

まず、DHLのオフィスがこのすぐ隣(上記写真の左端の赤い看板付近)にあるので、そこで受付を済ませる。パスポートやビザを提出し、そこでも二枚ほど書類を書いた。内容は自分の住所等の個人情報や、荷物の内容である。僕の場合、本や電子メモ帳やスマホやらAirpodやらが入っていたので面倒だったが、これらも全部個別に書き出せという。ちなみにココでズルをして記載を省いても、後のほうで自分の目の前で荷物点検をさせられるので無駄である。できる限り素直に書くしかない。

 

一通りの手続きを終えてしばらく待っていると、同じような境遇の人達2〜3人とともに、DHLの人の先導でこのボッバな建物に移動することになった。そこでも身体チェックや手荷物検査を受け、それらをクリアしてようやく敷地内に入れる。あー、あの建物が目の前にある、すげぇ、と感無量な気分に浸ってしまった。

 

この建物の中は巨大な倉庫になっており、10m以上もありそうなラックがズラーっと並んでおり、さまざまな貨物がそこに収納されていた。その合間をフォークリフトが動き回り、複数の作業員があれこれ忙しそうに荷物を点検したり書類を書いていた。単なる推測だが、きっとAmazonなんかの倉庫もきっとこんな感じなんだろう。ゲートが開きっぱなしの非常に開放的な作りだが、空調が効いているので中は驚くほど涼しかった。きっと貨物が傷んだりしないための措置だろう。今日は日差しが強かったので、空調無しならきっとあの広大な倉庫といえどもかなり暑くなるだろうし。

 

ここで、ようやく僕の紛失物と対面した。ここではさっき自分で書いた品物一覧に対して、実際に現物があるかどうかの突き合わせをするのである。ここでもし不一致があったら鋭く指摘され、リストに追記させられる。実際、僕の隣りにいたオッサンは何やらそういう不備があったらしくて、書き直しをさせられていた。

なぜそういうリストを作らされるのかというと、電子機器類などの品物には現在価値に対して課税をされるからなのだ。ここでも「各品物の価値を書け」と言われて閉口したが、けっきょくよく分からんので適当な値を書いておいた。無くした品物の一つはiPhone 6sだったのだが、その現在価値もよく分からんのでとりあえず5000ルピーとか書いておいたが、書類を点検していた倉庫のあんちゃんは、ニヤニヤしながら「本当に5000か?ん?」と突っ込んできた。その時はこちらもシレッと「Yes」と答えたのだが、あとで調べてみたら中古のiPhone 6sはインドだと10000ルピー以上するらしい。まあ、今さらどうしようもないが。

 

この点検によって、絶対に無くしたくない、換えが効かないと思っていたものは全部残っていることは確認できたのだが、実は、一部なくなっているものもあった。念のためDHLの人に「XXXが入っていたような気もするんだが、そちらで確認できないか」と訊いたところ、「引き取った時点でもうなかったはずだ。空港側に確認してみてほしい」と言われ、断念することにした。これ以上長引かせたくないし、本当に取り返したいものは取り返せたので、もうここで手を引くことにした。

 

このあと、荷物はまた倉庫に戻され、月曜日に改めて我が家に配送されるという説明を受けた。税金はDHLがまず国に支払い、あとは配達時に僕が税金と輸送代を併せて一括払いすればすべて完了である。これで月曜に来なかったら笑える(?)が、ここまで来たらもう大丈夫だろう。

 

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朝9時過ぎにDHLに到着したのだが、すべて終わって退散する頃にはもう午後1時近かった。ドライバーにはずっと待ってもらったので、お礼を兼ねて昼飯をごちそうすることにした。ドライバーに「どこでも好きなところに連れて行ってくれれば、昼食はおごるよ」と伝えたところ、空港から戻る道の途中にある食堂に連れて行ってくれたので、そこでミールスを食べた。ドライバーもそのミールスを選んだので、ミールス2つ・チャイ2つ・ミネラルウォーターの1リットルボトル1つで、合計335ルピーだった。まあ、こんなもんだろう。

 

とにかくすべてが無事に終ってホッとした。多少はマシな気分で年末を迎えられる気がする。ボッバ。