キッチンが直った話

家族みんなでゲホゲホしたり鼻をかんだりしていた。僕の場合も熱はないのだが鼻水が止まらない。風邪というやつはQOLも下げるし仕事の生産性も下げるし、良いことがひとつもない。

 

さて、地盤沈下のままずっと放置されていたキッチンが金曜日にようやく直った。金曜日は風邪を押してマスクとバファリンで固めて出社したのだが、午前中の打ち合わせを終えてちょっと一息ついていた11時過ぎに、会社の総務から「工事人が来た。マンションの受付で待っているらしい。住人のエスコートがないと中に入れないから、迎えに行って自宅に案内してやってくれ」と言われたのだ。そんな話何も聞いてないよ。せめて前日ぐらいに教えてほしいものだ。総務の人たちはだいぶ頑張ってくれているし、僕は真面目に取り組んでいる(と僕から見て思える)人に対してはたとえその人が失敗しても怒ったり叱責したりはしないタチなのだが、体調が悪かったこともあってちょっと不機嫌な態度で状況を問いただしてしまった。すると、基本的に総務とオーナーとの間ではちゃんと話をして段取りも決めたのだそうだが、オーナーと工事人の間についてはさすがに介入できないということで、けっきょくオーナーと工事人との間でワーワー電話で言い合いながら適当に話が進んでしまったんだろうと推測される。さすが、根回しが無意味な国だけのことはある。

相棒はたまたまこの時間帯は外に出てしまっていたので、僕が行くしかない。修理にどれだけ掛かるか分からないが、次の打ち合わせまで3時間ぐらいある。さすがにこれだけあれば何とかなるだろうと思って、立ち会うことにした。

 

で、マンションの受付に行くと誰もいない。受付にはもうすっかり顔なじみになった受付嬢がいるのだが、かくかくしかじかと話をしても、そんな人は知らないという。そこで総務の人に電話をして事情を確認してもらうと、5分後に折り返し電話が来て「もうあなたの部屋のドアの前にいるらしい。別の入り口から入ったとのことだ」と言われた。さっきと全然話が違うが、どうやら総務の人にとっても驚きだったらしく、困惑している様子が伝わってきた。推測はなんとなく付く。受付の背後の少し離れたところに、受付嬢からは死角になる形で駐車場直通のガラスドアがあって、そこは普段は磁石で閉まっていて、住人が持っているIDカードを使わないと解錠されないのだが、しょっちゅう全開のまま放置されていることがあるので、そこ経由で入ってきたんだろう。そんなことを考えながらエレベーターに載って自分の部屋のフロアに着いたら、まさにエレベーターの前で、手を後ろに回して壁にもたれかかっていた人がいた。僕を見るなり握手を求めてきたので、彼が職人だろう。とりあえず彼にはちゃんと直してもらわないといけないので、こちらも笑顔で対応して部屋の中に招き入れた。

 

ここから先は単なる修繕の話。

 

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まず小手のようなもので沈下している部分を上に持ち上げた。この小手はそこらの工事現場の廃材のようなもので、使い捨てなのか似たようなものを5本ぐらい持ってきていた。案の定、使っているそばからボキボキ折れる。本当にただの木材の切れ端のようなものなので、それを素手で握ってグイグイ力を入れているのを見ていると、ささくれが指や手のひらに刺さらないかとヒヤヒヤする。

 

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どうにか沈下した部分を元の位置にせり上げるや、謎の物体を取り出した。

 

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そして板の上にそれをたっぷりと垂らし出す。これ以外に青い蓋のほうのものも出していた。おそらく接着剤だろう。

 

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透き通った茶色のものと、カルピスの原液を極限まで薄めたような白い色のものの、二種類を出し終えたところ。白いほうは分かりにくいが、茶色の液のすぐ上に出ている。

 

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それを鉄製っぽいヘラでこねこねしながら混ぜ始めた。こういう作業は僕も好きである。「やらせて」と言いたかったが、こらえた。あと、このあたりでバファリンの効き目が切れてきてじわじわ熱っぽくなってきたので、当日二回目のバファリンをキメた。

 

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こねまくった接着剤を、鉄のヘラでひび割れ部分や沈下部分の底部に塗りつけていく。底部にはさっきの木の小手の破片なんかが押し込められているので、おそらく底上げするための詰め物だろう。それを接着剤で塗り固めているということだろうか。途中で「クロース、スローアウェイ、クロース」と言われ、何のことかと思ったが、どうやらヘラを拭いたりするために、捨ててもいい服やタオルのようなものがほしいと言っているのだと分かった。それぐらい自分で用意しろよとも思うが、とりあえずそういうものを探し、もう8年ぐらい履いているユニクロのトランクスを出すことにした。どっちにしろもうゴムがビロビロだったし、微妙に穴が開いている部分もあったので、潮時だろう。8年共に過ごしたパンツと異国の地でお別れ、それもパンツの本業ではなくて接着剤を拭うためかと思うとちょっと胸にグッときたが、最後の御奉公だ。パンツを見せると「そう、それそれ」という感じで受け取った修理工は、すぐにガンガン拭い始めた。さようなら8年越しの相棒よ。何度も屁をして済まなかった。修理工は使い終わったパンツは回収していってくれなかったので、Dry Waste側の袋に放り込んだ。

 

一通り終わり、修理工は帰っていった。だいたい1時間ぐらいの作業だった。

 

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2時間以上は乾かしてからコンロを置いてくれと言われたので、この状態のまま放置しておいた。メイドさんにもこれには触らないようにと伝えた。

 

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非常に分かりにくいのだが、樹脂というか膠というか、そんな感じのものでひび割れが補修されている。この時点で触ってみるとまだちょっとネバネバし、シンナーの臭いが感じられる。

 

ついでに昼メシの時間になったので、耐熱皿にインスタントラーメンを割り入れて水を掛けてラップし、電子レンジで2分ぐらい加熱した。最大出力ならそれぐらいで、ちょい固めのラーメンが出来上がる。食べてから会社に戻り、次の会議を完了して、無理せず早退した。まるで今日の出来事のような内容だが、金曜日のことです。