シャルム・エル・シェイク
Galaxy内のレストランで朝からドーサを食べる。ドーサは良い。特にマサラドーサが美味い。銀河系外の知的生命体に食わせても美味いと認めてくれると思う。
初めて行ったシャルム・エル・シェイクを振り返ってみたい。特に時系列は気にせず、印象深かったことを雑記風に。
1.サウディア航空とキング・ハーリド国際空港
今まで「リヤド国際空港」だと思っていたが、正式名はキング・ハーリド国際空港と呼ぶらしい。かなり綺麗な空港だとは思うのだが、何しろ空港内の施設が貧弱で時間を潰すのに困る。食事するところもバーガーキングだとかそういうファーストフード的なところばかりだし、バーが存在しないうえにラウンジの中ですら酒が一滴も提供されないのだ。イスラム教の総本山の国だから分からないでもないのだが、空港内でも飛行機内でもそこまで徹底しているのには驚く。同行者のMTさんとMZさんはキャビンアテンダントが通るたびにビールビールビールと頼みまくったらしいが、ことごとく駄目と言われたそうだ。下戸の人にとっては特に問題ないのだろうが、酒飲みにとっては実に面白くないところである。
そこにもってきて、僕の場合はこのキング・ハーリド空港からバンガロールまでのトランジットで5時間も遅延が発生して本当に参った。しかもアナウンスが一切ないうえにゲートすらシレッと変更される酷さ。途中でおわび的に振る舞われた弁当とジュースもかなり貧弱なもので、こんなもんで5時間の遅延をチャラにしようなんて良い根性してるなオイと内心で突っ込まずにはおれなかった。
リヤド空港は中近東付近におけるハブ空港的な位置づけと思われ、アジア圏におけるシンガポールのチャンギ空港みたいなものなんだろうが、正直なところチャンギに全然負けてる。遅延の話もあって、今後この空港と航空会社はできる限り避けて旅程を立てようと思った。
空港の周辺はこんな具合でひたすら砂漠である。さすが中近東。
2.ビザの話
シャルム・エル・シェイクとその周辺は、15日より短い期間であればビザ不要で滞在できる。なので、外国から直接シャルム・エル・シェイクに乗り込めるならそのほうが楽でお得ではある。翌日の便でやってきた別働隊はマスカット(オマーン)だかそのあたりからカイロ経由でシャルム・エル・シェイクに来たのだが、そのカイロからシャルム・エル・シェイクへの国内線の乗り継ぎだけのためにビザを購入する必要があったそうで、これは面倒だし勿体無い。カイロやギザを観光したい人ならそれも良いかもしれないが、シャルム・エル・シェイクだけが目的なら、直接ここに乗り込む旅程を立てるのがオススメである。
3.紅海
なんといってもダイビングが目的で紅海まで来たので、海の質が肝心である。その海だが、文句なく美しい。ボートが出る港湾付近は水深が浅いのでエメラルドグリーンなのだが、ちょっと沖に出るとすぐに真っ青になる。群青色というのか、藍色というのか、とにかく黒ぐろと青い。青系の漢字には微妙なニュアンスの違いがあるらしいが、紅海を表すなら「青」が一番ふさわしい字だろう。ボートからジッと水を眺めていると、未知の巨大生物がヌッと現れてきそうでちょっと怖くなるほどだ。逆にモルディブはちょっとやそっと沖に出ても「碧」な色合いが続く。遠浅な地形が続くからだろう。
いざ潜ってみるとなかなか水が冷たい。23℃ぐらいなので伊豆のほとんどの時期よりよりは暖かいのだが、モルディブとかタオ島のような場所と比べると実に冷たく、裾が短いタイプのウェットスーツではとても無理。インストラクターによると、しばらく前まではもっと冷たかったそうだ。本格的に暖かくなるにはあと2ヶ月ぐらい掛かるらしい。砂漠の酷暑地帯にあっても海水まで熱いとは限らない。
僕らが潜ったのはこのあたりになる。エジプトとはいっても、シャルム・エル・シェイクはアフリカ大陸ではなくシナイ半島にあるのだった。
ホテルの裏側にあるプライベートビーチに行くと観光客がひしめいていた。こちらは水深が浅いだけあって碧っぽい色であり、どこを切ってもリゾート地。モルディブは海岸のすべてが自分のための貸切かと思うほど人の気配が少なかったので、その点ではだいぶ違う。というかモルディブが特殊すぎるのかもしれない。タイのタオ島・サムイ島・プーケットや、このシャルム・エル・シェイクは僕の中での典型的なリゾート地のイメージ通りだが、モルディブは、なんというか、無人の惑星のような雰囲気だった。どちらが好きかというのは人によるだろうが、僕はモルディブのように俗化していない場所のほうが好みである。
4.客層について
なんといってもヨーロッパ方面からの客が多く、その中でも特にロシア人が多いという印象だった。不思議なことにアジア人顔の人間はほぼゼロである。ダイビングだけに限っていえば僕ら以外の日本人も参加していたが、夜の繁華街(後述)を歩いていても、僕ら一行以外にはアジア人はまず見かけなかった。インド人も中国人もいない。インド人はまだしも、中国人すら見かけないのには驚く。たぶん、ここはまだノーマークで、彼らにとっては一種の処女地帯なんだろう。遠からずここも彼らの注目を受けて、彼らで賑わうに違いない。
5.繁華街
典型的なリゾート地だけあって、ホテルと海岸との間に上の写真のような長い歩道があって、ここをまっすぐ歩くことでいろんな買い物や食事ができる繁華街に出る。この道の右手側にはホテルやレストランが並んでいて、左手側はビーチになる。僕らが泊まったホテル(Marriott Resort)からは1kmぐらい歩けば繁華街に辿り着ける。
そんな繁華街だが:
日中はゴーストタウン状態である。開けている店もちらほらあるのだが閑古鳥状態で、店員も店先にパイプ椅子を並べて座って雑談してたりスマホをいじっていたりして、やる気ゼロ。こりゃ凄いなと思ったが、よく考えたら日中はみんな海を楽しんでいるわけで、繁華街に行くわけがない。
そんな繁華街だが、夜は一気に人で溢れかえる。夜7〜8時ぐらいから人が増えてきて、そのまま深夜までずっとこの状態になる。日中は海でのんびり遊び、夜は繁華街に繰り出して買い物したり飲み食いしたりするわけで、その過ごし方は正しい。うむ。
ある日の夜、僕らはハードロックカフェに入った。ハーカフェになってた。食事ついでにシャルム・エル・シェイクのロゴが入ったシャツを2枚買いました。これ着て街を練り歩いたらマニアに注目されるかもしれない。おい、それどこだよ、と。あるいは聞いたことない地名だからパチモンだと思われてスルーされるんだろうか。
中は普通のハードロックカフェでした。エジプト感もシャルム・エル・シェイク感もゼロ。でもメシは超うま。
6.謎の虫
写真を載せようと思ったら相棒からストップが掛かったので掲載は見合わせる。要するにカナブンのような甲虫なのだが、これがホテルの部屋にしょっちゅう出現する。しかも100%ひっくり返って死にかけているのだが、刺激すると足をワシャワシャ動かすので、いちおう生きてはいる。4泊5日の滞在中に5匹ぐらい現れたと思うが、どこから入ってくるのか謎。いわゆるスカラベ(フンコロガシ)だろうか。しかしこの近辺は餌になりそうな大きな糞を落とす野生動物もいないし、正直良く分からない。ゴキブリのような見るからに不潔で生理的にアウトな外見ではないので、虫嫌いの僕でもなんとかトイレットペーパーごしに掴んで窓の外に捨てるぐらいのことはできるが、夜中にガサガサと音がすることがあり、迷惑といえば迷惑である。
7.お金の話
こちらはエジプト・ポンドと米ドルが使える。さすがにローカルの人が利用する店はエジプト・ポンドだけだろうが、ホテル近辺やタクシーなら米ドルも普通に利用可能である。チップもどちらでも構わない。こちらはリゾート地だけあってチップの習慣があるので、1ドル札をたくさん用意しておくと便利だろう。
エジプト・ポンドは、滞在時のレートはだいたい1ポンド=6.5円ぐらいだったので、僕は切り上げて7円扱いで計算していた。単純に七掛けすれば良いので楽である。
物価については細かいレシートを残さなかったので憶えていないのだが、リゾート地とはいえ「高い!」という印象は無く、「あぁ、安いねぇ」と皆で言い合っていた記憶がある。3〜4kmぐらいの距離なら、タクシーは20ポンドで乗れる。もちろん交渉は必要で、メーターも無い。予めホテルの人に相場を訊いてみたら「まあ、XXXXまでなら人によっては100ポンドだったり50ポンドだったり20ポンドだったりする。交渉しなさい」と言われた。最終日にホテルから4kmぐらい先にあるカルフール(後述)に行く時にタクシーを使ったが、まず値段を訊いたら200ポンドと言われた。ボッタクリもいいところなので「20ポンドなら出せるがそれ以上なら歩く」と言ったら「ん〜OK」とあっさり妥協してきた。インドと違って商売に対する粘りが足りない。こっちは助かるからそれで構わないけど。
8.カルフール
最終日に、ホテルから離れた繁華街にあるカルフールに入ってみた。お昼前にタクシーを使って行ったのだが、ここも廃墟のように閑散としていた。カルフールは地下にあり、その廃墟みたいな繁華街の入口付近からエスカレーターで下に降りていくと辿り着けるのだが、そのエスカレーターも完全に停止していた。明かりも点いていないし、本当に大丈夫かなと不安になったが、ちゃんとカルフールは存在していて営業もしていた。こちらはローカルの人も利用しているらしく、がぜん生活感に溢れた品々が並んでいる。
野菜の質は正直インドと同じようなものである。白タマネギも売っているところが違いだろうか。
キャベツが驚くほど大きい。大人の頭の倍ぐらいある。美味いかどうかは知らない。
オリーブ系は充実している。
これはなんだろう。ほおずき?
果物の質もインドと似たり寄ったり。品揃えも似ている。ほおずきが珍しいぐらいか。
肉・チーズ類はなかなか充実している。なんといっても牛肉があるのが素晴らしいし、質も一見したところ良さそうである。ただ、肉は思ったよりも高い。あと、当然だが豚肉はいっさい置いてない。
スパイス売り場かと思ったら、豆の量り売りだった。シャルム・エル・シェイクだけの特別な事情かもしれないが、この旅の中ではスパイシーな食べ物にいっさい出くわさなかった。こういうローカル向けっぽいスーパーでさえ、スパイスは小瓶に入ったものしか売っていない。そのかわり豆類がこうやって多量多種売られている。エジプトは豆なのか。
パスタ類はインドで買うより断然安い。
米も売っており、見た感じでは日本米にとても近い。味は不明だが、キロあたり100円程度なので、日本とほぼ同じぐらいか。けっきょく買わなかったが、お土産と思って試しにひと袋買ってみても良かったかな。
シリアル系は世界のどこでも同じようなものが並ぶ。
ハリボー天国。
スパイスはこんな感じで小瓶に入っているものしか見当たらなかった。
その中にひとつ面白いものがあった。Mastqueというもので、こんな少量で500円ぐらいする。これについては日を改めて書く予定。
Japan Premiumなオムツ。インドでもそうだが、「日本製のオムツ」っていうのは完全に確立された強力なブランドですな。
9.シナイ半島の風景
リゾート地とはいえ、ホテルを一歩離れればこんな風景が続く。見事に草木一本生えていない。
さっきの繁華街の写真の再掲だが、この奥にある岩山を見てほしい。基本的にこんな地形ばかりである。
シャルム・エル・シェイクから車で3時間ほど走ったところに、あのモーセが十戒を授かったと言われるシナイ山がある。改めて考えると、シナイ半島はユダヤ教・キリスト教・イスラム教が育まれた場所のひとつなのだ。こんなに暑くて殺風景で荒涼とした世界に生まれ育ったら、そりゃあもう一神教的な方向に走りたくもなるんだろうなと思った。こんな場所で生きていかねばならない自分は、きっと生まれながらに罪人で神から罰を与えられているのだ、みたいな。そうとでも考えないと毎日毎日やってられっかこんな場所!みたいな気分になるだろう。
10.その他
似すぎ。
ゴーストタウン状態の繁華街でマックを食べた。クォーターパウンダーなど普通のハンバーガーばかりでエジプトスペシャル的なものは一切見当たらなかったが、ビーフパティを食えるだけでも幸せです。マハラジャマックは飽きた。っていうかあれそもそもそんなに美味しくない。
ビールはだいたいこの2つかハイネケンぐらいしかなかった。どれもキングフィッシャー的な味わいで、そこまで美味しいわけではない。でも、飲めるだけでも幸せです。
11.まとめ
紅海は文句なく綺麗な海であり、スポーツなり個人的な旅行趣味なりで海に縁がある人は、一度は訪れて損はない。物価も手頃だし、湿度が低いうえに実は夜はそこそこ涼しかったりもするので、過ごしやすい場所と言えるだろう。ただ、完璧に俗っぽくリゾート地化されているので、世界のリゾート地に慣れ親しんでいたら、そこまで目新しいものがあるわけでもない。海もいいが、それこそシナイ山に行ってみるなど、地上の観光スポットに行ってみても、中近東のムードを味わえて楽しいかもしれない。