鼻泉道

最近、「鼻うがい」というやつを毎日やっていて、これを始めてからすこぶる調子が良い。どう調子が良いかというと、以前はあんなにも頻繁に風邪をひいていたのに、この鼻うがいを始めてからは、人混みの雑踏に行っても、飛行機に乗っても、その後まったく風邪の気配が無いのである。ただし、鼻うがいと言ってもあのスプレーみたいなやつを鼻の奥にシュッと入れて反対側からタラーっと出すようなショボいものではなくて、どんぶりに入れた塩水を鼻の穴からズズズっと吸い込んで口からドボドボと出すという強烈なやつである。これを「鼻泉道」と呼ぶらしい。

 

林望という国文学者がいる。学者らしい非常に真面目なものから軽妙洒脱なエッセイまでいろいろと書いている人で、文章のリズムが僕に合うのか、昔からこの人の本を好んで読んでいる。この人も非常に風邪を引きやすい人で、若い頃からさんざん風邪に悩まされ、それに対抗するすべを徹底的に考え抜いて実践したあげく、そのことだけを延々と書いた本まで出している。その本の中で紹介されているのが、この鼻泉道である。これを実践する様子はこの作者本人が自分のブログで公開しているので、それを見ていただきたい。さらには、この人の知り合いと思われる別の人物のブログでも紹介されている

 

にわかには信じがたい有様だが、やってみるととても簡単で、僕は一番最初に試したときから今に至るまで、一度もむせたことはない。要するに人肌ぐらいまで温めた水に塩を溶かして、舐めたら薄めの味噌汁ぐらいの塩味になるように調整し、あとはそれを、顔が地面と水平になるように上半身を前屈させた状態で鼻からひたすらすするだけである。ズゾゾゾっととんでもない音がするのだが、それは気にしないでひたすら吸い、鼻の中がいっぱいになったなと思ったら口からドボボボっと出すだけである。これを小ぶりの丼鉢でやれば、そのあとはずっと鼻がスカッとする。これだけの勢いで洗えば、粘膜についていた雑菌とかホコリも全部洗い流されていると思われる。

 

これをやったあとは、その体勢のまま鼻からフーンッと息を出して余分な水を出し切り、そのあとティッシュで軽く鼻をかめば、後で鼻から水が垂れてくることもない。完璧である。相棒には奇異の目で見られまくり、「やってみ?」と勧めても絶対に嫌がるのだが、この爽快感はぜひ他の人にも味わってほしいものである。

 

塩水にすることが重要なポイントであり、普通の水でやると鼻が強烈に痛くなる。この作者も真水でやると痛いからやめろと著作中で重ねて警告しているのだが、僕は無駄に好奇心が強いのであえて試してみた。すると、プールとかで鼻に水が入ったときと同じ痛みに襲われた。上の方で「一度もむせたことはない」と書いたが、むせたことはなくても痛みで悶絶したことはある。きちんとしょっぱい塩水を作って臨むことが肝要である。

 

と、ここまで真剣に書いてきたが、その効用をどこまで信じているかというと実は微妙だったりする。始めてまだ2ヶ月も経ってないし。要するに僕は一匹の変態なのでこういう変なことをするのが楽しいだけである。でも、スッキリするのは間違いなくて、鼻づまりに襲われていてもこれで一発で爽快になるので、試してみて損はないと思います。おしまい。