近況

粛々と仕事しているという以外に京都らしいネタもなにもまったくないので更新が滞ってしまっていたけれども、今日初めて、終日エアコンを使わずに過ごせたので、それを祝して近況報告します。「暑さ寒さも彼岸まで」というのは、本当ですな。

 

あと、いよいよ正式に日本帰任が決まって関東側に住む場所が定まったので、京都日記もそろそろ終わる予定です。4年半近く続けたインド日記がついに、しかも京都生活を記して終わるのか。しみじみ。

 

剃刀

仕事の日はいちおう毎日午後5時に一旦区切りをつけて、しかしインド時間の付き合いもあるので毎日9時や10時まで何だかんだと仕事しているので、そこから夜12時ごろに寝るまでがプライベートな時間になる。で、そこでYoutubeをダラダラ眺めていると、こんな動画を見つけた。

 

youtu.be

 

コンビニやドラッグストアで買えるプラスチック製の使い捨てのタイプじゃない、ちょっと大人な雰囲気が漂う金属製のカミソリである。渋いオッサンがそれを使った髭の剃り方を懇切丁寧に指導してくれるわけだが、まっっっっったく頭を使う必要がないので、ついつい何度も鑑賞してしまった。さらにお気に入りに入れて、思い返したように観賞している。このオッサンが髭を剃るときのゾリゾリという音も心地よいし、床屋によくある髭剃りクリームの作り方とか塗りたくり方とか、そういうのがいちいち良い。たまにシンクに溜めたお湯でカミソリをジャボジャボジャボっと濯ぐのも良い。11:19あたりでちょっと血が滲んでいるところも面白い。ああいうのを"Weeper"ということも学んだ。またひとつ賢くなってしまった。もうね、何もかもが良い。

で、いろいろ調べた結果、この手の大人な感じの金属製髭剃りではMuhleというドイツのブランドのものが著名らしい。おそらくこのオッサンが使っているものもそれだろう。

 

ex-insight.com

 

オーソドックスなタイプで7000円弱ぐらいらしい。しかも切れ味抜群で剃り心地も最高だとどんなページも絶賛している。7000円となると高く感じるけれど、使い捨てタイプでしょっちゅう替刃を買うことも考えると、たとえば1〜2年ぐらいのスパンで見たら充分見合う値段ではなかろうか。

 

いいなぁ、欲しいなぁ、買えるなぁ、買いたいなぁ、買おうかなぁ

  

f:id:amaken1976:20200919190545j:image

 

買いました。 Amazonで。

 

f:id:amaken1976:20200919190632j:image

もうすでに何度も使っているので表面に塩素のあととかいろいろ着いてるけど、この金属の光沢と、ズシっとした重みが素晴らしい。

親父がこういうタイプの髭剃りを使っていて、子供心にあれはいいものだと思っていたのだが、大学に入って一人暮らしを始めたときに親父からそれをくすねてしばらく使っていた。いま思えば贅沢なことだが、その時は数回使ってすぐに飽きてしまい、やがて就職して自分でお金が自由にできるようになったら家電屋で電気シェーバーを買って使うようになり、6年ぐらい使って壊れてからは今に至るまでずっとコンビニで使い捨てタイプの髭剃りを使って今に至っていた。しかし、これを今目の前にして、子供の頃に親父のあの髭剃りを見て興味を持っていた頃のみずみずしい感性が蘇ってきた。


f:id:amaken1976:20200919190623j:image

全身余すところなく光り輝く金属なんですよ。これがたとえば「超合金」製だとか言われたら、1970年代生まれの男全員の琴線に触れるだろう。ゴールドライタンというやつだ。


f:id:amaken1976:20200919190647j:image

こんな感じで分解できる。単純な作りなので、壊れることはまずないだろう。


f:id:amaken1976:20200919190638j:image

そしてこういう薄い剃刀の刃を


f:id:amaken1976:20200919190627j:image

こんなふうに装着する。


f:id:amaken1976:20200919190617j:image

さらに別の金属板をはめて


f:id:amaken1976:20200919190605j:image

刃を固定する。


f:id:amaken1976:20200919190609j:image

さらに取手を捻り込んで


f:id:amaken1976:20200919190635j:image

完成。


f:id:amaken1976:20200919190600j:image

髭を剃る、その一点だけのために作られている、その潔さがいい。

 

四日ぐらい髭を剃らずにおいて、その後銭湯でこれを使って髭を剃るのが、最近のささやかな楽しみである。

 

石を割る

Youtubeをつらつらと眺めていると、髭剃りに限らず様々な動画に出くわす。今までの我が人生において何の接点もなかったことがいくらでも出てくるのだ。まさに目眩く(めくるめく)という表現がふさわしい。たとえばこんなのもある。

 

youtu.be

 

初めてサムネイルを見た時には、これが何なのか皆目検討がつかなかったのだが、要するに金属製の楔をたくさん打ち込んで巨岩を割るというものらしい。こんな暇人の世界があるんだなぁと思ったのだが、よく考えたら日本語でも「石切場」という言葉があるぐらいだし、機械化が進むまでは、世界中できっとこうやって岩を加工していたんだろう。

 

金属の楔を岩に打ち込むときのコンッカッ…という乾いた音が良い。それを連続で叩く時のコンッカッ…コンッカッ…というリズミカルな音色が良い。こんなことをジジイではなく髭もじゃの若者がやっていることが良い。アメリカ人って若者がこういうアナログなことを楽しんでいることが多いですな。

たまに聞こえてくる、岩に亀裂が生える時のミリミリ…ピシピシピシッ…というささやかな音も良い。それを聞いた若者が無邪気に大喜びしているのもよい。もう何もかも良い。

 

で、この岩に打ち込んでる楔って手に入るのかなぁとふと疑問に思った。日本のAmazonで「石切り 楔」で検索してもそれらしいものが出てこない。しからばと、辞書を引くと「楔」の英語は「Wedge」であるらしい。そうか、たまにアイリッシュパブなんかで見かける「ポテトウェッジ」というメニューは、そういう意味だったんだな。

で、アメリカのAmazonで「rock wedge」で検索したら、それっぽいのが笑っちゃうぐらいたくさん出てきた。アメリカ人どんだけ岩切りたいのか。

 

www.amazon.com

 

f:id:amaken1976:20200919204106j:plain

ごっついわ〜。

 

あ、これだ、こういうのだ、俺はこういうのが欲しかったんだ、と思った。日本とインドの橋渡しになって毎日朝8:30から夜10時まで働くような日々の合間には、こういう潤いが必要なんだと分かっちゃったんですよ。

 

いいなぁ、欲しいなぁ、買えるなぁ、買いたいなぁ、買おうかなぁ

 

f:id:amaken1976:20200919190642j:image

 

買いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嘘です。上の Muhleの髭剃りの段ボールばこを切ってマジックで黒く塗っただけです。さすがにこれを買ったら相棒に殺される気がしたので自重した。でもいつか引退したら、広い庭のある家を買って、岩を調達して庭で毎日これで岩切りするんだ、と夢を抱いた。

 

銭湯

いま住んでいる親父の実家の周辺には、歩いて10分以内ぐらいのところに銭湯がちらほらあるので、足繁く利用している。京都の銭湯というのはけっこう有名らしく、こんな本まで出版されていた。もちろん買いました。

 

f:id:amaken1976:20200919191142j:image

よくあるコミックエッセイみたいなものだが、丁寧で可愛らしいイラストと、それぞれの銭湯の内装が緻密なスケッチで描写されており、なかなか読み応えがある。この筆者さんはもともと建築業界で働いていたことがあるらしく、なるほどという感じである。さすがにここに紹介されているすべての銭湯には行けないが、それでも四箇所ぐらいには行ってみた。笑っちゃうぐらいイラストどおりだった。すごい本である。

 

白土三平

こんな本が出ていると知って、これもポチった。

f:id:amaken1976:20200919191138j:image
f:id:amaken1976:20200919191147j:image

白土三平は母親が好きで、「テレビアニメでやってたサスケが面白かった」みたいなことを力説してたので、大人になってから文庫で復刻されたサスケを読んでみたら、まったく予想していなかったダークで救いゼロな展開が繰り広げられてゲッソリしてしまったという記憶がある。それでも面白いことは面白かったので、カムイ伝やらワタリやらなんやらを買って読み耽ったりした。2000年代の中盤ぐらいのことだから、その時点で40年ぐらい前の作品だったわけだが、それでも充分面白かった。

そういうわけで、この本の広告を見かけて買ってみたわけだが


f:id:amaken1976:20200919191134j:image

分厚い。ズシッとくる。しまも3200円。「ポチった」と書いたが、一瞬躊躇したことは認める。しかし、1960年代の漫画ばかりなのに今見てもあまり古びた感じがしないし話も面白いのが素直に凄いと思った。いや、もちろん古臭いところもあるんだが、不思議とあまり気にならない。目が大きくて可愛らしい絵柄なので、今の萌え全盛の時代にマッチしているのかもしれない。また、忍者たちが闘う時の動きは現代の漫画を比べても遜色ない躍動感と迫力で、元祖というか開祖というか、そういう力だろう。

読み切りを集めたタイプの冊子だが、一話読むだけでもグッタリと消耗するので、思い出したようにちょろちょろと眺めている。合間合間に挟まれている、白土三平本人や夢枕獏のエッセイも面白い。あと、白土三平漫画はだいたいなんでもそうだが、手足や指や首がボンボンと欠損したり、無実の娘が何ページにも渡って拷問されて死んだりする。現代の少年漫画でこんなのは描けないだろうな。時代の移り変わりを感じる。

 

こんな感じで京都で過ごしてます。いちおうコロナを警戒しているので観光はまったく行かない。せいぜい近所のスーパーやホームセンターに買い物に行くぐらいである。関東側に移って家族と合流したらどういう生活になるんだろうか。