骨折した人

朝の会議中、会議室の入り口付近でローカルスタッフの若手がこちらをチラチラ見ながら部屋に入りたそうにしていたので「どうした?」と訊いてみたら、なんと同じチームのやや先輩格の若手が事故ったと連絡が入ったのだという。そりゃえらいこっちゃと思って会議をいったん中止して様子を詳しく聞いたら、バイク通勤中(これはインドではぜんぜんあり)に犬が飛び出してきてはねてしまい、そのせいで自分も転倒して足を骨折してしまったのだという。犬も人間も両方可哀想だ。可哀想だ。本当に可哀想だ。だがしかし、だがしかし、絵面を想像して不謹慎にもちょっと失笑してしまった。なんとなくインドならではだなぁと。そういえば日本ってもう野良犬はぜんぜん見かけませんな。今の日本なら、ゴミを漁りに街に降りてきたイノシシと衝突とか、そんな感じになるんだろうか。

彼が所属している会社(彼は派遣社員である)のマネージャーがお見舞いに行って、骨折とは言っても複雑骨折だとか開放性だとかそういう酷いものではなく、頭を打ったりもしておらず命に別状は無いとのことで、いちおう開いて手術する必要はあるが、来週には退院できそうだということで、ひとまず安心した。すると、僕の職場に常駐しているサブリーダーが「あいつの家にJとSを向かわせた」という。「なんで家に?」と聞いたら「あいつはカミさんと二人暮らしでな、他に頼れる親戚も近くにいないんだ。JとSはあいつと家が近いからな」という。へ〜インド人は結束が強いな〜と納得しつつもいまいちピンと来なくてキョトンとしていたら、「あの夫婦はふたりともインドの北部出身で、カンナダ語が喋れないんだ。病院への入院手続きも苦労するから、助けてやらないとな」ということであった。う〜んなるほど、これこそまさにインド的な話だなと思った。敢えて日本で喩えるとどうなるんだろう。東京から青森の奥地への赴任中に怪我して、地元の超ローカル病院に入院したら医者も看護師も受付も全員バキバキの津軽弁で超困った…みたいな感じだろうか。

週末

以前からお付き合いしているDさんのご自宅に招かれて昼食をご一緒することになった。本来は土曜日の11:30にご自宅に集合という話だったのだが、当日の朝になってDさんから電話が掛かってきて「妻の歯が悪くなったので抜きにいって、いま医者なんだ。11:30には戻れないから、12:30にまた連絡する」とおっしゃる。「いや、そんな状況ならどうぞ奥様優先でお願いします」と言っても「ランチはもう準備できているんだ。大丈夫だから、ちょっとだけ時間をくれたまえ」ということで、おとなしく待つことにした。教養豊かで万事紳士的な彼も、こういうところはちょっとインドっぽくて面白かった。

 

で、12:30になったらまた連絡が来て「いまやっと家についた。10分ぐらい時間くれ、それから来てほしい」というので「じゃあ13:00に行きますよ」と伝えて「オー、それはグレートアイディアだ」となった。グレート。

 

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そして、お土産のワイン2本を持ってご自宅に伺うと、Dさんと、抜歯したあとらしく顔半分が麻酔でちょっと麻痺しているっぽい奥様が笑顔で出迎えてくれた。Dさんとはお酒をいただきながら少し歓談し、そして昼食が始まった。これ全部奥様が腕をふるって作られたそうで、見るからに美味しそうなのだが、実際に食べてみるとこれがさらに美味しい。ひとつひとつ全部解説してくださったのだが、一番手前左のオレンジ色のものは特殊なマンゴーを使ったソースで、ご飯やパロタにつけて食べる。一言で表してしまえばマンゴーシロップなのだが、これが不思議とご飯に合う。ここにさらに、奥様お手製のタマリンドのチャツネを混ぜると、味わいがいっそう複雑になって楽しめる。こんな感じでインドの東西南北あらゆる場所の風味を持った料理が並び、そのどれもが美味しいのだが:

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実はこれがダークホース的な旨さを放っていた。これは要するにチリをまるごとカード(ヨーグルト)に漬け込んでマリネし、その後カラカラに干すだけなのだが、これを指で砕いてカレーに混ぜ込むと風味が一段とアップする。あまりの美味しさにこれを大絶賛しまくったら、とても喜んでくれてこうやってお土産に持たせてもらった。塩味も強くて、おそらくマリネするヨーグルトの中に結構な量の塩が混ぜ込んであるのだと思うが、このおかげでふりかけのようにご飯にかけるだけでも結構美味しい。もちろん激辛なので僕は汗だくになったのだが、それを乗り越えてでも食べる価値がある。おそらく豚肉や鶏肉を焼いたものに振りかけるとたまらない旨さになるだろう。

お酒を飲み、いろいろ歓談しながら3時過ぎぐらいに失礼して帰宅。たいへんごちそうさまでした。こういうローカルの人とのコミュニケーションもまた楽し。

 


 

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何気なく映画用サイトを眺めていたら、もうゴジラ2が上映されていることを知った。子供時代からの怪獣・特撮ファンとしてこれは見逃せないだろう。というわけで日曜日の最終上映を観にOrion MallのPVR Cinemaに向かった。僕は他人に対してネタバレを避けるような配慮ゼロどころか積極的にネタバレを仕掛けて嫌がらせする超無神経人間なので、スポイラーが嫌な人は以下は読まないほうが良いです。といってもネタバレがどうこうとなるような深いストーリーでもないけれど。

 

  • 前作に引き続き人間ドラマ部分は基本面白くないのだが、でも人間が介入していろいろ動き回らないとストーリーが発展しないから、こればかりは致し方ないんだろう。放っておいたらただ怪獣たちが世界中を暴れまわって破壊するだけだしな。
  • 渡辺謙こと芹沢博士が前作とは打って変わって大活躍し、驚くほど流暢な英会話も披露する。面構えも濃いし眼光鋭いので、他のハリウッド俳優たちに存在感で負けていない。
  • 核弾頭が、ピンチに陥ったゴジラを救う…というか休憩中のゴジラに対するカンフル剤みたいな役割で登場するのだが、きっと日本のディープなゴジラファンの中には「そんなの絶対に許さん!」みたいな感想を抱く人も出てくるだろう。僕はそこまで気にしないのだが、そういうことを言う人達の気持ちも分かる。しかし、そもそも近年の日本のゴジラだってもう反核のテーマ性はぜんぜん帯びてなかったから、いまさら言っても詮無いことだと思う。こういう映画は頭を空っぽにして楽しく観ればそれで良いのだ。
  • 怪獣が登場するシーンはもれなく大満足。格闘シーンもど迫力だし、ゴジラの放射火炎も前作はちょっと細くて頼りない感じだったが今回はぶっといレーザーになっていて、直撃するとギドラの巨体が瓦礫を撒き散らしてぶっ飛ぶので最高。ピンチになったギドラが電気を吸収(?)して全身から放電しつつパワーアップするのも最高。ゴジラvsデストロイアみたいに体が赤熱した状態からの体内放射が決め技だったのも最高。もうとにかく最高。日本の着ぐるみ演技も悪くないと思うんだが、やっぱり今日のCGにはもう敵わない。着ぐるみじゃ絶対に演じたり撮影できないようなシーンがバンバン出てくる。シン・ゴジラみたいな変化球ならともかく、王道の怪獣バトルはもう日本では作れないだろうな。ハリウッドに渡ったせいでハードルが高くなり過ぎてる。
  • 不満というほどのものでもなのだが、いまいち釈然としなかったのが最終バトルでのゴジラの復活ぶり。モスラのおかげなのか、単に核エネルギーが暴走してああなっただけなのか、良く分からない。なんとなく後者のほうがしっくりくるのだが、だとするとモスラが登場する意義がほとんど無い気がする。
  • エンディングではスタッフロールに合わせていろんな新聞記事やニュース映像が流れるという演出になるのだが、スカルアイランドというキーワードがやたらと出てきたり、ゴジラキングコングっぽいシルエットが闘っている古代絵みたいなものが映し出されたりして、いよいよ次はキングコングvsゴジラなんだろうか。でもコングは基本いいヤツだし、ゴジラゴジラで人間を積極的に襲うわけじゃないから、闘う理由があまりなさそうだよな〜。このへんはどうなるんだろうか。あと4〜5年後ぐらいだろうか。楽しみに待つことにしよう。

上映直前にインド国家斉唱が始まったり、モスラが羽化して羽(翅)を広げる最高のキメシーンで空気を読まず休憩が入るあたり、あぁいつものインド方式だわ〜と和んだ。上映が終わって映画館を出る頃には深夜0時を回っていて、小降りの雨の中をダッシュで帰宅。もう月曜か…。

2019 ICC Cricket World Cup

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本日5月30日から「2019 ICC Cricket World Cup」というものが始まる。要するにクリケット版ワールドカップで、予想通りというべきか分かり易すぎるというべきか、インド中が熱狂している。

中央にいる青いユニフォームを着たヒゲの人物はヴィラット・コーリーなるインド代表チームのキャプテンである。キャプテンに選ばれるぐらいだから凄まじく優れた選手であろうし、その面構えも日本人からするとちょっと濃すぎる感じだが精悍で男前なのは間違いなく、そのためもあってか相当な著名人で、ありとあらゆる宣伝や広告に登場する。インドに居てこの人の顔を見ない日は無いといっていいぐらいである。我が家はテレビの回線契約を結んでいないので試合の中継を直接見ることはできないが、飲み会なんかでスポーツバーに行った時には、じっくり観戦させてもらうことにしよう。

 

っていうか、この人ぐらい立派なヒゲを生やしてみたい。

鼻泉道

最近、「鼻うがい」というやつを毎日やっていて、これを始めてからすこぶる調子が良い。どう調子が良いかというと、以前はあんなにも頻繁に風邪をひいていたのに、この鼻うがいを始めてからは、人混みの雑踏に行っても、飛行機に乗っても、その後まったく風邪の気配が無いのである。ただし、鼻うがいと言ってもあのスプレーみたいなやつを鼻の奥にシュッと入れて反対側からタラーっと出すようなショボいものではなくて、どんぶりに入れた塩水を鼻の穴からズズズっと吸い込んで口からドボドボと出すという強烈なやつである。これを「鼻泉道」と呼ぶらしい。

 

林望という国文学者がいる。学者らしい非常に真面目なものから軽妙洒脱なエッセイまでいろいろと書いている人で、文章のリズムが僕に合うのか、昔からこの人の本を好んで読んでいる。この人も非常に風邪を引きやすい人で、若い頃からさんざん風邪に悩まされ、それに対抗するすべを徹底的に考え抜いて実践したあげく、そのことだけを延々と書いた本まで出している。その本の中で紹介されているのが、この鼻泉道である。これを実践する様子はこの作者本人が自分のブログで公開しているので、それを見ていただきたい。さらには、この人の知り合いと思われる別の人物のブログでも紹介されている

 

にわかには信じがたい有様だが、やってみるととても簡単で、僕は一番最初に試したときから今に至るまで、一度もむせたことはない。要するに人肌ぐらいまで温めた水に塩を溶かして、舐めたら薄めの味噌汁ぐらいの塩味になるように調整し、あとはそれを、顔が地面と水平になるように上半身を前屈させた状態で鼻からひたすらすするだけである。ズゾゾゾっととんでもない音がするのだが、それは気にしないでひたすら吸い、鼻の中がいっぱいになったなと思ったら口からドボボボっと出すだけである。これを小ぶりの丼鉢でやれば、そのあとはずっと鼻がスカッとする。これだけの勢いで洗えば、粘膜についていた雑菌とかホコリも全部洗い流されていると思われる。

 

これをやったあとは、その体勢のまま鼻からフーンッと息を出して余分な水を出し切り、そのあとティッシュで軽く鼻をかめば、後で鼻から水が垂れてくることもない。完璧である。相棒には奇異の目で見られまくり、「やってみ?」と勧めても絶対に嫌がるのだが、この爽快感はぜひ他の人にも味わってほしいものである。

 

塩水にすることが重要なポイントであり、普通の水でやると鼻が強烈に痛くなる。この作者も真水でやると痛いからやめろと著作中で重ねて警告しているのだが、僕は無駄に好奇心が強いのであえて試してみた。すると、プールとかで鼻に水が入ったときと同じ痛みに襲われた。上の方で「一度もむせたことはない」と書いたが、むせたことはなくても痛みで悶絶したことはある。きちんとしょっぱい塩水を作って臨むことが肝要である。

 

と、ここまで真剣に書いてきたが、その効用をどこまで信じているかというと実は微妙だったりする。始めてまだ2ヶ月も経ってないし。要するに僕は一匹の変態なのでこういう変なことをするのが楽しいだけである。でも、スッキリするのは間違いなくて、鼻づまりに襲われていてもこれで一発で爽快になるので、試してみて損はないと思います。おしまい。

おしめり

職場と同じフロアにある例のスポーツクラブは朝6時から営業しているらしい。いっそエクストリーム朝活するライフスタイルに切り替えてやろうかと思ったが、肝心の朝6時に目覚ましを設定してもまったく起きれませんでした。自分はデキるビジネスマンには絶対になれないと分かった。

 

乾いているせいでヘドロ沼の水位が後退しているという話を2ヶ月以上前に書いたが、最近になって徐々に雨が降り出すようになり、一昨日は特に強烈な暴風雨が訪れた。そのために、水位がだいぶ回復してきた。

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ちなみに3月当初はこんな具合だった。

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コレ↑と比べると、明らかに水位が戻ったことが分かる。本来はこうあるべきなのだ。10年一日のようなBrigade Gateway内の暮らしでも、いちおうこういう変化は訪れる。しかし、水の汚さはまったく変わらない。多少は薄まってもいいのに。

StoriesでNさん歓迎会

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職場からメトロで一駅のMahalakshmi地区にあるStoriesという場所で、4月から赴任してきたNさんの歓迎会。下馬評通り停電した。肝心の味はなかなかのものだが、ビールが2種類しかなくて閉口した。たまたま今回だけか。