ヴァルカラあれこれ

<これまでのあらすじ>

ヴァルカラというリゾート地に着いて,日本が極寒に凍えきっているのを尻目に南国の真夏の太陽を燦々と浴びて羽根を伸ばしていたところスマホごと海水をかぶってしまいリアルタイムの更新ができなくなってしまった。仕方がないので割り切ってリゾート地を堪能することにした。


なお,まったく気まぐれで予備のスマホを持ってきていた(電話は不可,アプリもデフォルト状態,4G通信は生きている)ので,残りの日はこれを使って写真を撮影した。これがなかったら写真撮影も全部アウトだったことだろう。深く考えずに念のためということで持ってきて本当に助かった。

 

以下,メモにあれこれ書き記しておいたことをザッとまとめる。日付は特に書かない。

 

ホテルの外

ホテル周辺は本当に「村」という雰囲気で,基本的に民家ばかりである。ちょうどスマホが水をかぶってしまった日に,ホテルの外に探検に繰り出してみた。

 

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こんな風景が延々と続く。

 

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この界隈はこういう貯水池がそこかしこにある。水辺で沐浴している人をよく見かけたが,洗濯や農業にも使うんだろう。なお,水は意外なほど澄んでいて,不潔な感じは特にしない。飲めと言われたらさすがに断るけど。

 

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まだまだ続く。そして,ヨーロッパからと思しき旅行者たちも同じようにブラブラ歩いていて,よくすれ違った。

 

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こういうちょっとした雑貨屋もそこかしこに頻繁に現れる。日本でのコンビニみたいなもんだろうか。食料・水・生活雑貨はだいたいこういうところで調達できる。

 

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この「Varkala Beach」というのが,これまで写真に出てきた海岸です。

 

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ホメオパシーだろうか。アーユルヴェーダもそうだけど,こういう代替医療系のものをよく見かける。土地柄なんだろう。

 

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途中でちょっと町っぽい場所に行き当たる。といっても食堂や雑貨店ばかりで僕の目には面白いところではなかった。それでも人がたくさんいたし,地元の人たちが利用しているらしい町バスも停まっていたので,周辺のオアシスみたいなもんだろうか。

 

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そんな中で特によく整備された貯水池を見つけた。ここでも沐浴する人がいたり,子供たちが水辺で足をちゃぷちゃぷとさせて涼を取っていた。写真だと分かりづらいけど,水底の水草がはっきりと見えるほど水は透き通っていて,小魚も泳いでる。

 

そこを抜けてひたすら歩く。なお,このときはその予備のスマホの地図アプリを頼りにひたすら道なりに進んだだけなので,特に明確は目的地は無いです。

 

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くっそ暑い中を延々と歩いていくと,ちょっと俗っぽいものも出てくる。みんなホテルの紹介用看板。

 

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その看板写真の左側のほうに,ちょっと高級そうなホテルの門があった。高級そうだけど,海岸からちょっと遠いのよね。遠いといっても歩いて1.5kmぐらいだけど。

 

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道端に一定の間隔でゴミ(?)の山を作ってそれを燃やしている。写真だと分かりづらいけれど,実に煙い。ただ,不快な臭いはしなかった。案外ゴミではないのかも。

 

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こんなところにもあるCafe Cofee Day。

 

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かなり気合の入った貧乏小屋に見えるが,これも雑貨屋。中は意外とちゃんとしていた。もっと外見に気を使えばいいのに。

 

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周辺に似つかわしくないお洒落なカフェを見つけた。このカフェには最終日に訪れることになる。別項で詳しく書きます。

 

この時点でホテルから3kmぐらい歩いただろうか。猛烈に暑くて後頭部の後ろ髪のところから汗がボタボタと滴り落ちてくる。スマホの天気アプリで確認すると34℃だった。体力的にはまだぜんぜん大丈夫だったけれど,水のペットボトルも持っていないので,脱水とか熱射病にならないうちにここで引き返すことにする。

 

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帰り道に,民家の庭にいたヤギ。柵の手前に行くと近寄ってきたので耳の後ろを撫でてやったら気持ちよさそうに目を閉じた。かわええ。

 

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椰子の実ではなさそう。なんだろう。パパイヤ?

 

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このあたりの民家にはいちおう電気は通っているものの,炊事などではまだまだ薪を使って火をおこして利用しているところも多い。日本の水準から見るとホームレスの一歩手前のような,ただ石とモルタルで壁と天井を作っただけのワンルーム以下の大きさの家も多く,窓もドアもただ四角く穴を開けただけの開放的な作りなので中がほぼ丸見え,しかも中は真っ暗だったけれど,テレビの音が聞こえてきたり,小型の冷蔵庫が見えたりした。最低限の暮らしは出来ているようだ。そして,みんな特に貧困で喘いでいるという雰囲気ではなく,どちらかというとのんびりゆっくり過ごしているように見えた。もちろん彼らの内面や本音は分からないが。

 

アーユルヴェーダ系の食事メニュー

ホテルで朝・夜はビュッフェだが,メニューから注文して食べることもできる。アジア・欧米風となんでもあるのだが,少し冒険してみた。

 

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初日にも食べたトマトと人参のスープ。スパイス成分はまったく感じられず,甘しょっぱい優しい味である。やっぱり美味しくておかわり(もちろん有料)してしまった。なお,今日(1月7日)に味の記憶だけを頼りに自宅で再現してみた。ジャガイモを入れたせいでポタージュみたいになったけれど,充分美味しかった。

 

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アーユルヴェーダ・ティー」という謎のお茶。名前だけに釣られて頼んでみたけれど,残念ながら美味しいとは言えず。どこかで飲んだ気がする味で,必死に記憶をたぐったら思い出せた。あれだ,甜茶だ。あの甘くて苦くてエグくてマズいやつ。本当に甜茶なのかどうかは知らないけど,まさにあの味。

 

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アーユルヴェーダ・ターリー。これもアーユルヴェーダという響きだけでとりあえず頼んでみて後悔した。副菜類はそれなりに美味しいのだけれど,左側のご飯らしきものがボソボソした口当たりでご飯らしい甘みもなにもなく,まるでダメ。いろんな副菜を混ぜ合わせて必死に食べた。

 

こういうのは薬膳料理と考えればいいんだろうか。残念ながら僕はこれらは二度と注文しなかった。

 

ビール

1日目の記事にも書いたとおり,このホテルでは酒類はいっさい扱っていない。このままでは死んでしまうと思ったのでホテルの受付に相談したところ,「オートリキシャを呼んであげよう。彼が買える場所に連れて行ってくれる」と言い,手慣れた様子で手配してくれた。きっとこういう客が多いんだろう。30分ぐらいしたらオートリキシャがやってきたので,日焼け止めクリームを買うためにスーパーに寄ってもらい,そのままビールを売っている場所に連れていってもらうことにした。

10分ほどぶっ飛ばして着いたところは,初日の記事で「また文明圏に戻った」と書いた場所だった。このヴァルカラ界隈ではいちばん栄えているんだろう。いろんな店が立ち並ぶ区画に停車すると,ドライバーが「俺に付いてこい」と言うので一緒に下車して付いていったら,店の隙間を通って裏通りのような場所に入っていった。こんなところに本当にあるのかなぁ,追い剥ぎ食らったらどうしよう,と少し不安になる。その先には朽ち果てる寸前のようなコンクリートむき出しの建物があり,錆びたボロい階段を昇って二階に昇っていくのでますます不安になる。しかし,上の方から若い人たちが紙袋に何か入れて下に降りてくるのが見えたので,あれがきっと酒なんだろう。

そうして辿り着いた場所は,なんというか物置というか倉庫というか,店にはまるで見えない場所で,そこにこじんまりとしたカウンターがあり,その奥にはあらゆる酒類がむき出しだったりケースに入った状態で山のように積まれていた。パッと見,ウイスキーやジンやラムのような,いわゆるハードリカーもたくさんある。なーんだ,ちゃんとあるんじゃん。カウンターの兄ちゃんにおすすめビールを訊くと「じゃあこんなのはどうだ?」といろいろ薦めてくれた。

 

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そうして買ったのがこれ。一番右のKingfisherは飲み比べ用。会計の最中にカウンターの兄ちゃんが笑いながら僕に現地語で語りかけてきたが,残念ながらまったく分からない。とりあえず愛想笑いしながらサンキューといって退散したが,あとで帰り道にドライバーに訊いたら「GOAはけっこうキツいビールだから気をつけろよと言っていたんだ」と教えてくれた。そこでドライバーとちょっと打ち解けて,酒絡みでいろいろ話した。「おまえ,けっこうイケるくちか?なんでウイスキーとか買わなかったんだ?」「ビールが好きなんスよ」「俺はビールよりラムだな。Old Monkって知っているか?インド製だが安くて美味しいぞ」「知ってます」「俺はあれがあればほかは何もいらん。カミさんは飲まないからつまらん」みたいな感じで喋っていたら,あっという間にホテルに戻った。

 

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足代を支払おうとしたら「お前,明日は暇か?俺に電話くれればどこにでも連れて行ってやるぞ」と,社内の張り紙を見せてくれた。ドライバーはマニさんというのだとこの時知った。面白そうだけど,今回はのんびり海を見て癒やされたり読書することに決めていたので,足代300ルピー支払ってバイバイ。

 

アーユルヴェーダ

とはいえ,せめて何か一つぐらいアーユルヴェーダを試してみたいという気持ちもあり,3日目のときにホテル内のアーユルヴェーダ施設を試してみることにした。このホテルは敷地内にアーユルヴェーダの施術院が併設されており,専任の医者も勤務している。まず医者と話をして,その後何をするか決めるのだ。僕の場合は純粋にレジャーでやりたいだけだったので,自分のやりたいものを伝えたらあとは時間を予約するだけで済んだけれど,本気で施術されたい人は,ここで医者とじっくり話をして体調を診察してもらい,その診察結果に応じて数日〜数週間を掛けて取り組むものらしい。

 

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こんな場所でしばらく待たされた。その後,真ん中ぐらいのドアから医者に呼ばれて中に入り,少し話をする。意外にも普通の診察部屋で,内科医のような雰囲気だった。いろいろ迷ったあげく,額にトロトロとオイルを流す「シロ・ダーラ」というものを選択した。「あれは気持ちいいよ〜」と皆に言われるので興味津々だったのだ。

 

翌日,所定の時刻にまた医者のところに行くと,こんな部屋に案内された。

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暗い…。なんだか手術室みたいでちょっと不安になる。そして,部屋にはルイージのような痩せた小柄なおじさんが一人だけいた。ドアを閉めて二人きりになると,身振り手振りで「服を脱げ」という。とりあえず上着を脱いだら,ズボンを指差して脱げという。それも脱いでパンツ一丁になったら,なんとパンツも脱げという。正直かなり焦ったけれど,モジモジするのも恥ずかしいので思い切って堂々と脱いだ。てっきりタイ式マッサージみたいに専用の道着のようなものを着るのかと思っていたけれど,まさかすっぽんぽんにされるとは。おじさんは特に感慨もなさ気に「そのベッドに寝ろ」と指示する。ベッドはビニールシートが敷いてあった。なんだろうと思ったら,おじさんはまず僕の体中にオイルを垂らし,その後全身を両手で押さえつけながらダーーーっと撫で回してきた。チ◯コ以外は全身余すところなく撫で回された。といってもかなり強く押さえつけてくるのでくすぐったさは全然無い。しかし,正直言って特に心地良いわけでもなく,何が何やらという感じだった。その後「うつ伏せになれ」と言われ,これまた背後を全身まんべんなくグイグイ撫で回された。全身油まみれになった。これはこれで不思議な感覚だったけれど,気持ち良いとか爽快ということは特に無い。油はコーヒーっぽく重くて甘い独特な臭いで,悪臭ではないけれど正直あまり好きなものではなかった。

チラっと壁の時計を見たらこの時点で50分経過していた。うーん,俺ちゃんとシロ・ダーラって言ったよな…と考えていたら,おじさんが「仰向けに戻れ」という。言われるがままに油まみれのベッドの上で仰向けになると,そこに氷嚢を額に乗せる時の吊り下げ棒のような器具を持ち出してきた。そして僕の目に布を掛けて,ちょうど眉毛の上の部分を細い鉢巻で締めてきた。布で目を隠されているので何も見えないのだが,なんとなく僕の額の上に器具を持ってきて,そこに何か吊り下げている気配が感じられた。ああ,きっと何か容器みたいなものを吊り下げて,そこからオイルを垂らすんだな…と考えていたそばから,額に温かい液体が注がれるのを感じた。キター!ようやく本格的に始まった。これは確かになかなか気持ち良い。全身マッサージなんかしないで最初からこれをやってくれれば良かったのに。オイルは徐々に熱くなってきて,時々アツツツ…と感じるほどにまでなったけれど,これはこれでやっぱり気持ち良い。眉毛の上の鉢巻は,目の方にまでオイルが流れ込んでいかないためのものだったのだ。時々おじさんがオイルを額の上の容器に補充しているのが分かる。そんなことを考えているうちにオイルが当たっている部分の感覚が薄れてきて,どこからがオイルでどこからが皮膚なのかだんだん分からなくなってきた。

気がついたら少し意識が飛んだようだったけれど,途中で目が覚めた。そしてけっきょく30分ほど続けてから終了。最後はタオルを渡されて全身の油を拭い去ってから服を来て退出。これで完全に終わり。正直なところタオルなんかじゃ油は拭ききれないので気持ち悪い。このあと部屋で海パンに着替えて海で泳ぎ,全力でクロールしたり平泳ぎしたりしながら全身のオイルを流した。

 

率直な感想を言えば,少なくとも今回やったものは期待はずれだった。タイ式マッサージだと施術中は痛気持ち良く,その後も1日中体に痛気持ち良い余韻が残ってサッパリするけれど,今回受けたこのシロ・ダーラはそういう爽快感はぜんぜん無かった。たまたま変な担当者に当たったのか,単に僕にはシロ・ダーラが合わなかったのか。バンガロールにもアーユルヴェーダの施術院はあるので,いずれそこでも試してみよう。

 

想像以上に長くなったので記事を分けることにする。続きは明日。

トイレのマナー

う○こしにフロアの共用トイレに行ったらこんな張り紙があった。

 

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ビルの管理事務所あたりが貼ったんだろうけど、絵はおそらく日本人が描いたものをどこかからパクってきたんだろう。この男性の踵のあたりに書いた人のサインらしきものが見えるが、潰れていて読み取れなかった。それはそれとして、よくこんな状況を描いたものを見つけてきたもんだ。

 

あと、便座に座るのがちょっと嫌になった。

The Beer Cafe

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最寄りのショッピングモールOrion Mallに、The Beer Cafeなるレストランが登場したのでさっそく行ってみた。

 

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名前の通りビールで勝負している店なので、同じく最寄りのDistrict 6と思いっきり競合すると思ったものの、District 6のほうは自家製ビールを提供しているのに対してThe Beer Cafeのほうは一般流通している国産・輸入ビールの品揃えで勝負しており、方向性がやや違う。ザッとメニューを見ると30種類ぐらい揃えており、アサヒまであった。

 

良かった点

  • ビールの数が多い。
  • 店内が比較的静か。District 6のほうは会話がほとんど不可能なほどの大音量で音楽を流しているので困る。
  • 無料Wi-Fiを提供している。

 

イマイチな点

  • 高い。輸入ビールなんか小瓶でも800〜1000円相当になるものまである。
  • IPAがない。これほどいろいろ揃えているのに残念すぎる。

 

総合すると、やっぱりDistrict 6のほうがベターであろうかなぁ。惜しい。

今日から仕事始め

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勤務先の日本側はただいまお正月休みの真っ最中だが,インド側では1月2日から仕事始めなので今日から出勤している。もっとも,インド側は12月最終週がお休みだったので,通算では日本側よりも休みの日数が微妙に多い気がする。とはいえこちらも大半のインド人が有給休暇を入れているので,ざっと見渡した限りでは職場の稼働率は50%ぐらいだった。まあ,そうだよね。

 

トリヴァンドラムの写真を整理していたら思いの外枚数が多くて氣が尽きてきた。週末に持ち越すことにする。忘れなければ。

iPhoneの修理

先週のリゾートっぷりを改めて書こうと思ったけれど,本日iPhoneを修理しにいった顛末が面白かったのでそれを先に書くことにする。

 

リゾート地での二日目にLightningの充電口を壊してしまったので,バンガロールiPhoneの修理を請け負ってくれる「iRepair India」という店に行くことにした。Koramangalaという地域とWhitefieldという地域の両方に店があり,ちょっと遠くなるけども,まだ行ったことのないWhitefieldという地域を見てみたくてそちらに向かった。

 

で,現地に到着してみたら,ボロボロに錆びついた小さな螺旋階段を登ったところにある,こじんまりとした店があった。一瞬怯んだけれど,なんとしても直したかったので登って店の中に入った。すると…:

 

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こんな感じの,日本でいうワンルームぐらいの大きさしかない殺風景なオフィスになっていて,従業員らしい小柄で細い兄ちゃんが一人だけこの机に座っていた。

この写真に写っていない左側にはパイプ椅子がいくつか並んでいて,そこにサリーを着た客らしいお姉さんが座っていた(しかし,兄ちゃんはその人向けに何か作業をしているふうでもなく,僕が最終的に退出するまで,二人の間にはまったく会話がなかった。今でも謎)。

反対の右側のほうには別室に通じる口があって,その別室はごちゃごちゃと機材や道具が無造作に置かれた工房のようになっていた。他にも机の横にiPhone用のケースや充電器が陳列されていたけれど,どの箱も分厚く埃をかぶっていた。

 

こんなところに俺の大事なiPhoneを託すのか…と不安で仕方がなかった。

 

しかし,始まってしまえばこの兄ちゃんは実に真面目・迅速・丁寧にやってくれた。なんでそんなことを言えるのかというと,その工房らしい部屋にはドアがついていないので,待合室から作業内容が丸見えだったからなのだ。兄ちゃんは机の上に僕のiPhoneを置いて,なにやらいろんな道具を駆使して背蓋を開け,特に迷うこともなく細い器具でいろいろ取り外しながら,新しいLightningのソケットとコントローラーを装着し,また蓋をもとに戻した。そういう一連の手付きがとても丁寧でよどみなかったので,この人なら大丈夫そうだな,とちょっと安心した。

もう一つ感心したのが,ちゃんと修理完了後の動作確認をするチェックリストがあって,それをぜんぶ丁寧につぶして確認していたことだ。電源を入れて再起動できる,充電ができる,カメラが起動する,ホームボタンが正しく動作する,指紋リーダーが動作する…といった,Lightningに関係なさそうな部分も含めてざっと12〜3項目を,ひとつひとつ確認してチェックしていた。あぁ,これだ,こういう仕事のしかたをインドで見たかったんだ俺は,と感激した。

 

最終的に問題なく動作することを客(僕)と一緒に突き合わせて確認し,作業完了。税込みで3600ルピーぐらいを支払ってお礼を行って店を出た。いま,ちゃんと動作している。バンガロールに住んでいる皆さん,iPhoneの不具合で困っていたらiRepairという店に行きましょう。

 

以下は余談。

店を出たは良いのだが,車がまったく捕まらなくて閉口した。OlaでもUberでもまったく車が見つからないのだ。この修理屋のある大通りは小さい店がたくさんあって賑わってはいるものの,大きな会社のオフィスやショッピングモールが一切ない。ここにやってくるような人はだいたい現地の中間層〜やや貧乏な層の人たちばかりで,そういう人たちはだいたい自分の足(車やバイクやスクーターとか)を持っていたりバスを使ったりしている。だから,こんなところ客待ちをしていてもまるで商売にならないのだ。

…と,炎天下の中をとぼとぼ歩きながら考えた。配車が見込めそうなIndiranagarまで歩くことにしたけれど,そこまでですら10km近くある。けっきょく7kmぐらい歩いたところでギブアップして,不本意ながら久しぶりにオートリキシャに乗った。幸い土産物屋とかには連れていかれずに済んだ。Indiranagarに着いてToitでビールを飲み,メトロで帰宅。メトロは便利でいいなぁ。家に着いたらニヤニヤしながら充電して,泥のように昼寝した。