エアロショーの惨事

ここ数日、Aero Indiaというインド防衛省の空軍によるパフォーマンスショーが行われている。要するに戦闘機の編隊で空中を自由自在に飛んであれこれするという、空軍の技術力を披露する場である。二年に一回行われるこのイベントのために日中の旅客機のスケジュールが変更を余儀なくされるなど、個人的にはけっこう嫌な影響があったりもするのだが、一大イベントなのでインド人たちはみんな大喜びである。僕はこの手のイベントにはあまり興味がないという無味乾燥な人間で、2017年にも行ってないのだが、いちおうこういうショーがあることは知っていた。

で、そういう性格だからこのショーよりもチンポまるだし巨大像のほうを観に行くことにしたのだが、その帰りがけ、ドライバーといっしょに昼食を食べている時に、ドライバーがスマホを観て「うわーこれ見てみろよ」と僕に見せてきた。それを見ると、野外駐車場らしいところから猛烈な黒煙がモクモクとあがっていて、映っている何十台ともしれない車たちが火に包まれていた。「エアロショーで駐車場が火事になったらしい」というのだが、詳細はその時点では分からなかった。「ドライバー仲間の友人がそこに行っているんだ。客を乗せていったらしいんだが、そいつが動画を送ってきた」とのことだった。「そのフレンドの車は無事なのか？」と訊くと「そいつは別の場所に停めていて助かったらしい。でもあと10分ほど早かったらこの火事のあたりに停めていたらしい」とのことだった。時間にルーズでもこういう時はそれが奏功するらしい。

そして本日、新聞を受け取ったらさっそくその記事を探した。あった。

写真に写っている車がみんな真っ黒けである。300台近く巻き込まれ、当面の見積もりでは４億（40 Cr）ルピー相当の被害らしい。ケララからわざわざ見に来たカップルも巻き込まれてシクシクみたいなことも書いてある。これだけの車がおじゃんになったら相当な帰宅難民が出てきそうだが、いちおう役所が支援を出してくれたらしい。何が原因かははっきり分かっていないようだが、誰かのタバコの吸い殻からボヤになったか、車の回路がショートしたか、という二通りの推測が出ているらしい。タバコの吸い殻でっていうのは良く分からないが、車の中のタバコの吸殻が消えきっていなくて火の粉みたいなものが紙とかに燃え移ったんだろうか。

なんとも酷い話だと思って他の記事を見てみたら、なかなか興味深いのがあった。

「私は26歳で月々2万ルピーを稼いでいます。この20ヶ月ほど、3ヶ月単位の自動投資で5000ルピーずつ投資して引退後の生活に備えています。他に保険の証券を50万ルピーぶん持っています。月々3000から4000ルピーほど、光熱費等に支払っています。直近での目標は3〜4年後の結婚に備えて結婚費用150万ルピーを貯めることですが、それほどの蓄えがありません。アドバイスください」という感じの相談に対して、ファイナンシャルプランナーというかアドバイザーというか、そういう人がいろいろアドバイスしているのだが、そのアドバイスの内容は対して面白くなかったので、割愛するとして、質問内容がいろいろ興味深い。まず、なんといっても月収が20000ルピーだということだ。この人がどのような階層の人で、性別が何で（Mayurという名前で検索すると男の顔がけっこう出てくるのだが、たまに女の顔も出てくるのでなんとも言えない）、どんな職業に就いているのかも分からないが、新聞に投稿するぐらいだからそこまで貧民というわけでもなさそうだ。となると、おそらく中級か中の下ぐらいだろうか。いずれにせよこの金額は驚きである。投書するぐらいだから、この人はTimes of Indiaを読んでいるわけだろう。相談事項を投書しようと思うぐらいに新聞を購読し、かつ投資したり証券を買っているような26歳の月収水準がこのぐらいなのだ。さらに結婚費用として150万ルピー必要と言っているが、月収の75倍である。相当な高額だが、となると、あれか、インドだと結婚にあたって女性が支度金を用意しないといけないという風習があるという話なので、このMayur氏は女性なんだろうか。いずれにせよ、このままだと4年後どころか5年後でも150万ルピーを用意するのは無理そうだ。このファイナンシャル・アドバイザーもコメントの前半で「このままでは無理ですね」と明言し、そのあとでいろいろ投資商品の選び方とかをアドバイスしていたが、「これで大丈夫です」というような表現は巧みに避けていた。まあ、そりゃそうだろうな。今の世の中、４年後どころか１ヶ月後だって何がどうなるか分からんし。

オクラと人参を買ってきて、弁当の具材を作った。これにて本日は終了。