週末の悦楽

土曜日は久しぶりにインド映画鑑賞会にお邪魔した。会場はいつもの通りThe Chanceryである。今回は笑い要素がほぼゼロの深刻な内容で、そこにアクションが織り交ぜられてなかなかの見応えだった。シナリオと演出が練りに練られたハリウッド映画を見慣れた目線で鑑賞すると要所要所にツッコミどころはあるのだが、そういう部分もいずれは克服されて、映画作りが成熟していくことだろう。

映画終了後、企画者ARKさんと観客の皆さんとともに「祭」で懇親会ディナー。何を食っても美味い。

 

帰り際、「ビールを買ってきてちょんまげ」という指令が入ったので、会場すぐ近くのToniqueに立ち寄る。これは、いつだったかなぁ、3ヶ月かそこら前あたりに出来た新しい酒屋で、これまでは外から眺めているだけだったのだが、今回初めて中に入った。

 

f:id:amaken1976:20200302020958j:image

魂消る(たまげる)ほど美しい内装で、お酒も種類によって整然と分けて陳列されている。ただぼんやり歩きまわって眺めているだけでも楽しい。ちょっとした博物館や美術館鑑賞のようだ。二階はまるごとワイン売り場らしいのだが、今回は夜遅かったこともあって面倒だったのでパス。


f:id:amaken1976:20200302021046j:image

ビールもかなりいろいろ取り揃えてある。WITBIERとあり、てっきり白ビールだと思ったのだが、翌日MK氏に飲んでもらったところ、ラガー的な味だそうである。


f:id:amaken1976:20200302021019j:image

どういうコンセプトなのか分からないが、フクロウっぽい鳥が描かれている。

 

f:id:amaken1976:20200302021058j:image

これは瓶ビール。BELGIANと書いてあるが、インド製らしい。

 

f:id:amaken1976:20200302021109j:image

ベルギービールだということを押し出しているのだが、さっきのフクロウのやつといい、インドってベルギービールがブームなんですかね。


f:id:amaken1976:20200302021052j:image

ビールだけだとつまらないなぁと思って、ウィスキーの小瓶も買った。これで百何十ルピーぐらいだったかな。

 

とにかく面白いところだった。夜9時を過ぎていたのに店は意外なほど客が多くて、しかもそれがみんなインド人だったので、インド人というかバンガロール人の酒好きの一面が良く分かる。家に着いてから、ドライバーも酒を飲むということなのでKing Fisherの500ml缶を一本お土産に差し上げた。家帰ってから飲めよときちんと伝えましたよ、もちろん。

 


 

日曜日は絨毯博士にしてOcean's 11のビッグボスであるMZN氏と、値切り交渉の攻撃力が高いMRさんのリードで、MGロード沿いにある、絨毯を中心に扱う土産物屋に挑んでみるというイベントがあり、そこに参画させていただいた。

 

f:id:amaken1976:20200302021124j:plain

一人だったら絶対に怖気づいて入れなさそうな店構え。

MIRACOなるお店で、MGロード沿いのCafe Coffee Dayのすぐ真隣である。絨毯というものを真面目に眺めるのは今回が初めてであり、率直に言って単なる暇つぶしのつもりだったのだが、博士や店員の解説を聞きつつ眺めていると、にわかに興味深くなってきた。ほとんどの絨毯は手織りで、その中にちょっとだけ機械織りのものが混じっているという状況なのだが、機械織りのものは模様が異様に細かいのでほぼすぐにそれと分かる。しかし、機械織りはひたすら細かいだけで何となく無機質であり、一方で手織りのほうは独特の味わいが感じられるので、僕は断然手織りのほうがおすすめである。この手織り絨毯はカシミールで職人がじっくり手織りしたものだそうで、たとえば1日に4時間ぐらいしか作業できず(めちゃくちゃ神経を使うので披露するし、目にも負担が高い作業らしい)、それで半年だとか11ヶ月だとか掛けて織りあげていくのだそうだ。MZNさんが面白い試算をしていて、日本の水準で例えばひとりあたり時給1000円とすると、1日4時間で4000円、月20日働くとしてそれだけで8万円、それを半年とすれば48万円、11ヶ月なら88万円に相当する、ということになる。しかもこれは職人技能なので、実際には時給1000円では効かず、試算より遥かに高くなるだろう…ということである。

 

f:id:amaken1976:20200302031138j:plain

時給1000円換算でも余裕で5000万円近くありそうな宝物庫に見える。

 

 

f:id:amaken1976:20200302031158j:plain

熱心に絨毯を品定めする人々。黒シャツが僕です。



f:id:amaken1976:20200302021011j:image

そんな話を聞いて内心恐怖に慄きながらもいろんな絨毯を見せてもらう。どれもこれも綺麗なもので、シルク100%ということで肌触りが抜群に良い。風呂上がりに体を綺麗に拭いてからフルチンで寝っ転がりたくなる感触である。絹独特の光沢もあって、光が当たる角度によって色味も変わってくる。

 

f:id:amaken1976:20200302021351j:image

さんざん見せてもらったのだが、もう欲しくて欲しくてたまらなくなってしまい、相棒と協議した結果、やや小さめのものと、ドアマットに使えそうなものを一つずつ購入することにした。近くではMRさんが値引き交渉を心底楽しんでそうなオーラを全身から発しつつ常時ホームラン級の交渉力を発揮して店員にどんどん圧を掛けている。もちろん店員も百戦錬磨なのでのらりくらりと圧をかわすのだが、結果的に35%引きという値引き幅が提示された。

 

f:id:amaken1976:20200302021103j:plain

電卓を凝視しながら熱いバトルが繰り広げられる。

僕らが買ったものは値札価格が合計143000ルピーぐらいだったのだが、それが92950ルピーになったわけである。そこで一芝居をうち、相棒と議論したふりをしつつ、90000ジャストにしろと言ってみたら、その店員は一瞬眉毛をピクッとさせ、そのあと笑顔に戻って「それでは私は明日から死んでしまう」と言うので、そこでこちらも露骨に嫌そうな顔をして相棒のほうに顔を向けたら、「分かった。でも今日だけだぞ」と言って、その店員は90000ということにしてくれた。

 

MRさんはさらにノリノリで交渉を続け、けっきょく相棒にストールを一枚無料でつけてくれるということになった。この交渉力の高さはマジで参考になる。店員は周囲の他の日本人メンバーに「あぁ、この人は本当にタフな人だ。彼女は私の血を一滴残らず吸い取るつもりだ」と言いながら、ストールをいろいろと見せてくれた。

 

f:id:amaken1976:20200302031226j:plain

生き血を吸い取られる店員たち。


実際に支払いをする段になって、支配人っぽい人が、僕の相手をしていた店員に「それとそれか、35%だから93000ぐらいだったよな」と言ったので、すかさず「いや、90000だろ、さっきそういう話になったよな」と割り込んで切り返したら、その支配人は横で見ていた僕が一瞬ドキっとするほど険しい表情になり、その店員に現地語(カシミール語か?)で叱責めいた口調でなにやら言っていた。店員はPOS端末に目をやったまま小さい声でなにかボソボソと呟き、支配人は鼻から大きくため息をついて、肩をすくめて向こうに行ってしまった。おそらく90000ルピーにできたのは上々の成果だと思って良いんだろう。


f:id:amaken1976:20200302021027j:image
f:id:amaken1976:20200302021359j:image

その後はみんなでITC Gardeniaに場所を移し、Edoでサンデーブランチ。実はEdoの横の西洋・インド取り混ぜたビュッフェレストランにあるケーキが凄くて、みんなお皿の上に大量に乗せて席に戻ってきた。もちろん僕もそうである。いちごを使ったケーキがどれも美味しくて、ひたすらそれらを食べた。逆に抹茶プリンっぽいものは、甘みのない、ほんのり抹茶風味のババロアのようで、すこぶる不味かった。


f:id:amaken1976:20200302020949j:image
f:id:amaken1976:20200302021409j:image

家に帰ってから絨毯を広げてみる。見れば見るほどウットリなのだが、その見た目以上に肌触りが良いのが素晴らしい。裸足で歩いてみるとたまらない。


f:id:amaken1976:20200302021040j:image

角度をつけて撮影すると、手前と奥の方とでだいぶ明るさが違って見える。これも歩き回って角度を変えながら眺めてみると、玉虫色とでもいうのか、独特の光沢が感じられて美しい。

 

そんな日曜日でした。