ロックダウンな日々

ロックダウンもいよいよ二週目に入った。在宅勤務を続けてみてよく分かったのだが、電話会議やビデオ会議は思ったよりも体力を消耗する。顔が見えないぶん神経を集中して相手の言うことを聞くからだろうか。おまけに通信事情がよろしくないこともあって相手の言っていることがほとんど聞き取れないことも多く、「すみません、もう一度言って」「声がぶつ切りなんですが」というやり取りを何度も繰り返すことになり、これも余計に神経をすり減らす。一回終わるとぐったりになってしまうのだが、そんな会議が一日に二回、三回と発生する。どうにかならんものか。

 

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これは先週末にオリオンモール前に家族でブラっと散歩したときの様子である。フルチンになって奇声を上げて走り回りたくなる風景になっている。

 

 

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Daily Basketの裏の野菜売り場でマンゴーが売られていたそうで、相棒が調達してきた。まさか今年の初マンゴーがロックダウンの最中になるとは。まだ少し未熟ではあるけれど、程よく酸味がありつつほんのり甘くて、僕好みの味だった。

 

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相棒がドーサの生地を買ってきた。なかなか大きな袋で、すでに液体状の生地が入っている。そのままだとイドリーになるのだが、そこに水と塩を少し入れて薄めるとドーサ生地になるらしい。

 

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さっそく作る。本当はドーサ屋でシェフのオヤジがやるように巨大な鉄板を前にして水をバシャーっと掛けて盛大に蒸気を出してから、そこで一度に二枚、三枚と焼きたいところだが、ロティ用フライパンで代用した。これでもちゃんと焼ける。

 

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勢いに任せて何枚も焼いてしまった。写真映えしないが、実は結構パリッと仕上がっている。たまに店で出てくる、ヘにゃっとした気合の足りないドーサと比べるとかなりよくできたほうではないだろうか。そして、なにより焼き立てが最高。

円安てぇ

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ふとINR対JPYレートを調べてみたら1.69円ぐらいの超円安進行中になってて、思わず「おい、XXXX(相棒の名前)!!今だよ今!送金するなら今だって!!!凄いぞこれ!!」と興奮して喚き声を上げ、先日大混乱の中をなんとか日本に帰国したSさんとYさんに電話で「まだ残しているなら、今すぐMさん(会社のローカルスタッフの経理)に送金依頼したほうがいいですよ!!」と伝えたところで昼寝から目が覚めた。ドキドキした余韻を残したまま、もしかしてと思って調べてみたら、1.44円でした。

 

あまりに暇なロックダウン中の土曜日のなせる技だろうか。

在宅勤務というもの

本格的に在宅勤務を始めて3日が過ぎた。厳密に言えば水曜日はUgadiでお休みだったのだが、みんなロックダウンでハイになっているためか、こんな日でもバンバンメールが飛んでくるしガンガン電話会議が発生したので、事実上普通の勤務日と変わらなかった。

たかだか三日経過したに過ぎないのだが、在宅勤務について思うことがすでにいくつもある。「在宅勤務」で検索すると山のようにいろんなブログやニュース記事がヒットするので、おそらくこれから書くことはどれをとっても誰かが語り尽くしているような気がするけれども、そういった記事はあまり読みこまずに、自分なりの感覚を率直に書いてみたい。

 

意外と集中できる

これが自分にとってはとても意外だった。僕は今の今まで、自分は在宅勤務には最も向かない人種だと自覚していたからだ。きっとゲームやネットサーフィンですぐに気を散らしてしまったり、10分おきにコーヒー紅茶を作り出したりして、ろくに仕事が進まないだろうなと決めつけていたのだった。ところが、実際に在宅勤務を始めてみると、1時間や2時間ぐらいは本当に気を散らさず集中して仕事に没頭できてしまう。日中はトイレにもほとんど行かない。相棒がなるべく邪魔をしないように配慮してくれているというのもあると思うが、非日常的な状況なので神経が興奮しているんだろうか。今のところダレる気配はないし、つい業務中にビールを飲んでしまうということもない。ビールについては、昨日で在庫が尽きたというのもあるのだが、後述するようにいつでも電話が掛かってくる可能性があり、気が抜けないのだ。ビールを飲んで酔っている暇もない。

こちらの仕事の状況とは無関係に子供たちがはしゃぎ回るので、その相手をするのだけれども、これは気持ち的にはともかく物理的にはものの数分でだいたい落ち着くことなので、そこまで差し支えはない。むしろ職場にあってしょっちゅう雑談ばかり仕掛けてくる隣席のアイツとかちょくちょくお茶に誘ってくるアイツとか会社の旅費精算システムの使い方が分からないといって自分で調べもせずしょっちゅう訪ねてくるアイツのほうがよっぽどウザくて邪魔だった。

 

通勤がなくて快適

これはもう言うまでもない。たぶん在宅勤務を経験している人は100人が100人とも同意するだろう。僕は現在ドアツードアで5分程度という極めて恵まれた通勤環境にいるのだが、それでもその手前の作業、つまり着替えたり身だしなみを整えたり靴を履いたり…といった細々とした作業は面倒なもので、それらが通勤時間の5分も含めて全部なくなる。これが実にいい。体力・気力ともにまったく消耗しないままパンイチでハミキンしたまま仕事に臨めるのだ。「通勤」という儀式が無いと仕事モードのスイッチが入らないんじゃないかと少し心配していたのだが、少なくとも僕に関してはそんなことは全然なかった。

 

プロジェクターの悩みから解放される

パワポなりなんなりの資料を投影するために、どうしてもプロジェクターのある会議室を押さえたいと思っても、先約が入っているのでどうしても押さえられない、ということがしょっちゅうあった。しかし全員が在宅勤務という状況だと、当然のようにSkypeとかWebExのようなビデオ会議ツールを使うことになるので、参加者全員で自分のデスクトップや開いているウィンドウを共有できるから、こういう会議室確保の悩みがゼロになった。ぶっちゃけ、通常勤務に戻っても、会議はぜんぶビデオ会議ツールで自席からやっちゃえばいいじゃんという気がしてきた。イヤホンとかヘッドセットを使えば、臨席で別の人が他の会議をやっていてもちっとも気にならないだろう。

 

電話の頻度が高まる

これはマイナス点。同じ職場にいたら、ちょっと立ち寄ってフッと会話して解決するようなことでも、まずチャット→伝えきれず電話、ということがしょっちゅうある。最近のイケてる職場はチャットでのコミュニケーションが最強だとかメールなんてもう使わなくなったみたいな、若気の至りのような強気の雑誌コラムやブログ記事がたまに目につくが、それでも物理的に声で対話したい局面はいくらでも出てくる。そういうわけで、ちょっとしたことでも電話が掛かってくるようになったし、こちらもつい掛けてしまうことが増えた。本当は全部チャットで片付けられたらスマートなんだろうが、なかなかうまくいかない。

 

休憩のタイミングが分からない

これもマイナスか。職場だと、なんとなく仕事の合間合間にトイレでうんこしたりパントリーでお茶を作ってもらったりできるし、昼休みの時刻も決まっているので、そこに一種のリズム感が生じるのだけれども、在宅勤務だとそういうのがなくて、何となくずーっと仕事をしているような状態になる。何しろ相手はインド人なので昼食の時間が日本人のそれとズレているから、こちらが昼食を食べたい時間でもガンガン電話してくる。それの対応をしているうちに何となく昼食を食べそこなって、そのまま仕事を続けてしまったりする。さすがに途中で腹が減るので冷蔵庫を開けて間食をとったりするのだけれども、これって栄養的にはよろしくない気がする。

在宅勤務だと、場合によってはベッドに大の字に寝っ転がってスマホでメール返したりしてのんびりできるかと思ったが、そんなのありえない幻想だった。

 

運動不足になる

これもたぶんみんな思っているし悩んでいるだろうなぁと思う。片道ドアツードアでたった5分でも、たとえば階段で職場(日本でいう8階)まで昇り降りしたり、職場の中を移動していたら、それなりの運動にはなった。在宅勤務だとそれがまったくない。こういう時こそプリズナートレーニングの出番な気がするのだが、家族の前でやるのは意外と恥ずかしいし、仕事に一区切り着いた時点では割とぐったり疲れているので、あまりやる気になれない。

 

こんな調子でプラスマイナスいろいろあるのだが、今のところプラスのほうが大きいと思っている。あと1週間ぐらい様子を見て、また振り返ってみたい。

21日間のロックダウン

今日の話題はなんと言ってもこれだろう。

昼過ぎだったろうか、「夜8時からモディ首相がなにかスピーチするらしいぞ」という話題が流れ込んできた。ついでに「この自宅待機の状況が延長されるらしいぞ」という話も耳に入ってきたので、そういう内容であろうということはある程度予測していたのだが:

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「21日間のロックダウン」と大写しになるとなかなかインパクトがある。気が付いたら8時過ぎだったので大急ぎでYoutubeで「Modi speech live」で検索したらすぐにヒットした。幸いまだ始まりのほうだったので間に合った。

 

 

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モディ首相がそういうスピーチをして、国民に辛抱と忍耐をお願いしていた。このグルとか哲学者のような貫禄ある風貌と落ち着いた声色でそのように語りかけられると、なんとなく「ですよね」という気分になる。といってもヒンディー語はぜんぜん分からないのだが。モディ首相は英語も話せる人のようだが、こうやって大衆に語りかける時は努めてヒンディー語を使っているらしい(Wikipedia情報)。

モディ首相の左側にいる五人衆が何者なのかさっぱり分からないのだが、与野党の人だったり評論家だったりといった顔ぶれだろうか。

 

 

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たまに四人衆になったりする。

 

 

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この左側の真ん中にいる、ネクタイを締めた紺色のブレザーの人物がやたらと能弁かつ攻撃的で、全身全霊を奮って終始怒鳴り声をあげながらモディ首相を擁護していた。彼は多少なまりはあっても非常に聞き取りやすい英語の使い手なので何を言っているのかほぼ100%分かったのだが、なんというか、たとえば「いいですか!モディ首相はXXXXX(ヒンディー語の単語)という言葉を使われたんです!!XXXXXですよXXXXX!!!その意味が分かりますか!!!!こんなに慈悲深いことはないんです!!!!!まさに彼の決断力の表われなんです!!!!!!皆もっと真剣に彼の言うことを受け止めてるべきだ!!!!!!!受け止め方が足りない!!!!!!!!!」(←記憶に頼っているので正確ではない)みたいな感じで1〜2分以上ずーっと捲したてるのである。日本で評論家がこんなことをテレビの前で発言したら、たまげた御用評論家っぷりだということで一笑に付されたり動画ネタの材料にされて終わりそうだが、この国だとなんとなく「あぁ、インドだな」とすんなり腑に落ちる。向かって左下にいるグルっぽい老人がなにか反論めいた事を物静かに言ったらすぐに割り込んできて「黙りなさい!!静かにしなさい!!!!貴方の言っていることはまったくもって不適切でピントがずれている!!!!聞きません!!!!!もう聞きません!!!!!貴方の言うことを聞いても時間が無駄になるだけだ!!!!!!!貴方は間違いだ!!!!!!!!!」みたいな感じで怒鳴り散らして、彼のワンマンショーになって終わった。一体何者なんだろう、この人。興味が尽きない。

 

そういうわけで今日のような自宅蟄居が今後21日間も続くわけだが、いったいどうしたもんだろうか。まあ、休みになるわけじゃないので、今日から始めた在宅勤務を粛々と続けるのみである。この在宅勤務については今日1日だけでもずいぶんいろいろ思うところが多かったのだが、もう何日か続けてから後日感想を書いてみたい。

 

モディ首相のスピーチを聞いていたら腹が減ってきたので辛ラーメンを食べた。

月曜日の風景

怠け癖がついてブログの更新が滞り気味だということを書いたけれど、最近はちょっとだけ更新頻度が高まってきた。コロナ関連の話題に事欠かないということと、一種の非日常感によるハイな精神状態だからだろうか。

 

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昨日はインド中が自宅蟄居だったが、今朝は鬱憤を晴らすかのように芝生エリアで腕立て伏せに勤しむ人がいた。でもね、僕知ってんだ、あの一角は猫の糞があったんだ。雨で溶けてあのへん一体に広がってるよきっと。ひぃ。

 


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エレベーターの中はコロナ関連の注意喚起の張り紙で埋まっている。たった一枚ですらエレベーターでの昇降中にはとても読みきれないのだが、なんだろう、とりあえず物量で啓蒙していく作戦だろうか。

 


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食堂はかろうじて開いていた。今日はいろいろあってあまりガッツリしたものを食べる気分になれず、Fruit Bowlという、いわばカットフルーツ盛り合わせを頼んだ。手のひらに余る大きさのアルミの容器にパパイヤ・りんご・パイナップル・ザクロなどが山盛りで入ってくるのだが、みずみずしくて甘みがあるし、脂っ気ゼロで胃に優しいので、カレーに疲れた時には良くこれを食べている。それで60ルピーなのだ。工場務めの人から「工場の食堂に出てくるカレーは30ルピーぐらいで超安い(が、超まずい)」という話をよく聞くのだが、それには及ばないにしても充分安い。

一方で、写真のようなチョコブラウニーがあって、これは手のひらにちょこんと乗るぐらいの大きさでしかないのだが、75ルピーもするのだ。胃の容量的にはコスパが悪すぎるのだが、カロリー的にはこっちのほうが勝ってるから、それでトントンということか。知らんけど。

 

 

明日からバンガロールでは規制が一層強化され、町の通りを歩いているだけで補導の対象になる、という話をローカルスタッフたちがしていた。そうこうしているうちに総務から一斉通達があり、僕が務める会社も明日からインド全土で在宅勤務徹底ということになった。期限は3月31日までということだそうだが、これも何となく延びそうな臭いがプンプン漂ってくる。明日から在宅勤務か。正直、落ち着いて仕事をできる環境ではまったくないので不安しかないが、やるしかないだろう。

日曜日

3月22日はインド全土で屋内待機の指示が出ていたので、店に行くのはおろかマンションの外にすら出ることができず、家の中に閉じこもっていた。蟄居というやつだ。英語だとCurfewと呼ぶらしく、今までのインド生活の中でこの言葉を2回ぐらい聞いたことがあるが、実際に国全体でこんなふうに適用されたのは今回初めて経験した。本当にどこにも行けないし、行ったところでどこも閉まっているので、家の中でひたすら時間をつぶすしかない。耳を澄ましていてもまったく雑音が入ってこず、列車や電車のクラクションも、隣のテニスコートで熱の入った人があげる奇声も、何も聞こえてこない。

 

「こんなときでもサービスしてくれている警察や宅配員や医者や報道関係者やらの皆さんに感謝の意を込めて、17:00になったら皆さんベランダや窓側に出てベルを鳴らし、彼らの努力に報いましょう」みたいな御触れが出ており、本当にそんなことをするんだろうかと思っていたら、本当にそれが始まった。17:00ジャストか数分早いぐらいのタイミングで、マンション中が歓声とリンリンとした音に包まれた。僕自身はあまりこういうイベントに参加するタチではないのだが、それでもちょっと面白くなったので、平べったいフライパンとお玉で参戦してみた。なかなか硬質で澄んだ綺麗な音が出た。こういう時のインド人の一体感は本当に凄い。

 

その夕方、領事館から、23日から1週間、バスや電車等の公共交通機関が停止されるので各自よく注意するようにとの連絡が来た。社員の中には、特に車を持てない若手は、バスや電車を利用している人たちも多い。彼らはたぶん出社できないので、在宅勤務か待機を許可することになるだろう。いやぁ、こんなことになるとは年明けには想像もしていなかった。

マハラシュトラ州が凄いことになっている件

生真面目な日本人スタッフとごくごく一部のローカルスタッフだけが出勤している状況の中で、ふとニュースを見ると、ムンバイどころかマハラシュトラ州全域で、スーパー・銀行・薬局などの決定的に大事な施設を除き、すべての会社・施設が3月31日まで閉じることになったという記事が出ていた。ちょうど仕事上のパートナー会社がムンバイにあるので、いよいよ彼らも全面的に在宅勤務かと思って電話で探りを入れてみたら、やっぱりそうらしい。他にも何人かに話を聞いてみたら、みんな在宅という話だった。

そのうちの一人は、3月10日のホーリー祭の時に「キミら、こんな状況でもマジでホーリーやってんの?」と訊いたら「当たり前だろ。うちは安全だからな。っていうかそっち(バンガロール)はどうなんだ。危なくなったらいつでもこっちに来いよ。連日徹夜業務で歓迎するぜHAHAHA」というクソ面白くもないジョークを吐いた奴だったのだが、実際、当時はマハラシュトラ州ではコロナ患者が報告されていなかったのだ。今日、探りの電話を入れたついでに「やっぱホーリーやったからこんなことになったんじゃねーの?」と言ったら、「まー、やっぱりそうだよな」と笑っていた。実際、笑うしかないだろうな。

 

真面目な話、インドで一番ビジネス活動が活発で、連日世界中と繋がりまくっているムンバイやプネが、この状況下で無傷でいられるわけがないだろう。まだ患者が報告されていなかった時から、はっきり言ってみんな内心ではそう思っていたに違いない。

 

そのうち、うちのプロジェクトチームの女子三人組とボウズの二人組がおずおずとやってきて「Amaken-san、実は在宅勤務できないかと思いまして…」とおずおずと申し出てきた。なんでも皆のご両親が心配しているらしく、家に残っていなさいと言ってくるらしい。それは確かにそうだろうな。もともと彼らにはピーク時間を避けて遅めに出勤しても良いということを伝えてあったのだが、この状況だと在宅勤務をしたくなるのも当然だろう。そういうわけで、急遽IT部門に相談して彼ら彼女らが社外にノートPCを持ち出せるように手配し、週明けから在宅勤務OKとすることにした。

 

うちの会社は今のところ在宅勤務を強制するには至っていないので、僕は当面出社するつもりである。とはいえ、お隣のマハラシュトラ州がこんな事態に陥っているのだから、遠からずカルナータカ州も同じことになるだろう。